そうか、まずは自分のマネジメントスタイルを変えて、関係の質を上げていかないと、売り上げが上がらないのか、と。それから全ての店長たちは、店舗スタッフがたとえ的外れなことを言ったとしても、頭ごなしに否定しない、細かい部分でも頑張りを見つけて承認する、アイディアを無下に否定するような言い方をしない、店長だからと1人で決めてしまって一人ひとりの主体性をつぶしてしまうようなことはしない……といったことを意識するようになりました。

小室 店長自身がコミュニケーションを改善して、関係の質が上がっていった結果、どんな変化が出てきたんですか。

 大きかったのは、店長たちの中で「パラダイムシフト」が起きたこと。具体的に言うと、「当たり前を疑う」という意識が生まれたことです。それまですべて自分で考え、動いてしまっていた店長が、スタッフにも意見を聞いてみるようにしたら、社員だけでなくアルバイトスタッフからも多くの意見が出てきた。たとえば、「もっとレジ回りを整理整頓したい」「バックルームを掃除したい」というようなことです。

 それを実現させてみると、接客中に「あれはどこにいった?」などと探す時間が短縮されて、接客に注力できるようになったわけです。そして、さらに率直なコミュニケーションが取れるようになってくると、スタッフからやっと本音が出てきたんです。

「フィーリングの残業」を
止めるという決意

小室 どんな本音ですか。

 実は、本来の勤務時間が終わっても、帰宅することへの遠慮がたくさんあったのです。たとえば、「今日はまだ売上目標を達成していない。スタッフが店内に5人残っていたら、もしこのあとお客様が一度に5人いらしても対応できるから、もう少し職場に残っていよう」「あの先輩が忙しくて残っているのに、自分が先に上がるのは気まずいから残っていよう」といったものです。

 こうした、明確な必然性がないのにエモーショナルに発生してしまう残業を、私たちは「フィーリングの残業」と名付けました(笑)。そして、店長自身がフィーリングの残業をなくしてみました。明確な必然性がない日は、思い切って帰る。すると、早く帰った時間を使って旧友とお茶をしたら、流行のトピックや最近のトレンドなどを知ることができ、それが仕事に生きた、という人も出て来た。こうやって日々の疲れが蓄積しない毎日を送っていると、休日の過ごし方も変わり、それまで休日は1日中家の中にいて寝てばかりだった人が、あちこちに出かけていくようになったのです。