その瞬間、会場内からこの日一番の拍手が沸き起こった――。
6月28日、国内製薬最大手である武田薬品工業の定時株主総会が、大阪市内で開かれた。武田薬品はアイルランドのバイオ医薬品大手シャイアーを買収することで同社と合意したことを5月8日に発表している。株総が質疑応答の時間に入り、この買収に反対する一派が財務悪化や高リスクを指摘する厳しい質問を投げかけた瞬間、大拍手が鳴ったのである。
武田によるこの巨額買収は、シャイアー1株に対し48.17ポンド相当(現金と株の組み合わせ)で買い取る内容で、総額は6.8兆円に上る。日本企業の海外企業買収では過去最高額となり、この案件が発覚後、財務悪化などを懸念して、株価は総会前日時点で約20%下がっていた。
株総で買収反対派が攻撃を仕掛けると、一般個人株主中心の株総会場は熱気を帯びた。しかし、株主が買収を支持するか否かの意思が表れるであろう二つの議案に対する結果は、会場の熱気を反映するものではなかった。
議案の一つ、クリストフ・ウェバー社長CEOら取締役の再任案は、「概ね90%以上の承認」(会社側説明)で可決。もう一つ、買収に反対する一部株主が提案した「事前に株主の意向を反映させることで、取締役会の買収権限に一定の制限を付ける」趣旨の定款一部変更案(第6号議案)は「10%程度の賛同」(同)で否決された。