羽田空港アクセス線構想が本格化
利便性が向上する一方で課題も
JR東日本が「羽田空港アクセス線」構想の実現へと、本格的に舵を切り始めた。羽田空港アクセス線は、海外からの日本への玄関口を充実させる路線計画として、2020年の東京五輪に向けて検討がなされていたが、その経費負担をめぐって調整が難航し、東京五輪に向けた計画としては、一旦棚上げにされていた。
今回JR東日本は、2028年の開業を目指して計画の検討を再開することを表明したわけである。この羽田空港アクセス線は、実は興味深い論点を持つ計画なのだが、まず、その構想について簡単に説明しよう。
現在、都心から羽田空港へは、東京モノレール(JR東日本傘下)と京浜急行空港線(京浜急行傘下)の2つの路線が運行している。羽田空港アクセス線構想は、これらの鉄道に代わる第三のアクセス手段をつくる計画だ。
この計画、まず羽田空港のターミナルから約6キロメートル離れたJRの東京貨物ターミナルまで新線を建設する。羽田空港アクセス線はここからJR東日本の既存の線路を使って3方向に分かれる。それは田町駅から東京駅に向かう東山手ルート、りんかい線経由で大崎駅から新宿を経由し埼京線につながる西山手ルート、そして同じりんかい線を東京テレポート経由で新木場までつなぐ臨海部ルートである。
この路線が開通すると、東京駅から羽田空港までは18分(現在は東京モノレール経由で28分)、新宿駅から羽田空港までは23分(現在は京浜急行経由で41分)、新木場駅から羽田空港へは20分(現在は東京モノレール経由で41分)と、いずれも羽田空港へのアクセスが飛躍的によくなると期待されている。
さて、「アクセスがよくなるのだから、基本的に歓迎すべきこと」でよいのだろうか。鉄道の新線計画においては、いくつか考えなければいけないことがある。順に説明していこう。
鉄道事業は、そもそも公益事業に位置付けられている。私鉄も含め鉄道会社が完全な営利企業になってしまうと、採算の悪い路線や駅を安易に閉鎖してしまうなど、人々の足をなくしてしまうような事態が起きかねない。だから、鉄道の開業や運賃設定は国がコントロールしているし、鉄道会社の経営に関してもきちんと監督している。