6割の調査データをもとに結論を出す
たとえば、海外のヒット商品を日本に導入したが、あまり売れていないケースがあるとする。消費者の嗜好が違うのか、それとも、消費者がその製品になじむまで時間がかかっているだけなのか、今一つよくわからない。
消費者を集めてフォーカス・グループ(ユーザーのニーズを把握するために、数人の消費者を集めて行われるインタビューのこと)の調査を行い、意見を集めてみても、なかなか確定的な答えには到達できない。本当の答えは、時間を待たないとわからないのだ。
と言っても、これも6ヵ月待てばいいのか、1年待ってみなければわからないのか、それもわからない。
という状況だから、調査をいくら精緻にやっても答えは得られないのである。そんなことに膨大な時間をかけるぐらいなら、自分の頭で考えて、現時点で手元にある情報をもとに正しいと思う結論を出し、次に進んでいったほうが、結果にたどりつくためには、はるかに効率的である。
だから、調査は完璧を求めず、6割の結果で満足してよい。
何に対しても仮説をつくる習慣を持つ
こうして材料が集まってきたら、目標を達成するための方策について、「ああやれば、こうなって、だから、ああなるな。フムフム」と仮説を作ってしまう。
仮説というと、何か難しいことのように聞こえるが、要するに、材料をつなぎ合わせて、ストーリーを作るということである。言葉悪く言えば、お話をでっちあげるのである。
これをやれるかどうかが、時間短縮できるかどうかの鍵になる。大まかな仮説ができてしまえば、あとはそれが本当にうまくいきそうかどうかを検証していけばよい。
私のようなコンサルタントは、クライアントの会社でやれば1年かかるようなレポートを、3ヵ月で出してくれなどと頼まれる。いかにして早く結論にたどりつくかが勝負なのだ。それまでまったく知識のなかった業種でも、何とかその依頼を成し遂げられるのは、この仮説作りが早いからだ。
得られた情報をもとにざっくりとした仮説を作る
たとえば、自分の会社がアメリカでいわゆるコモディティー製品を売ってきたが、今度はハイエンドの製品を売ろうと計画した場合を考えてみよう。
そこで、アメリカの販売網を分析すると、コモディティー商品とハイエンド商品では、小売店網が分かれており、そのための流通網も別だということがわかってきた。
また、営業マンに要求される知識やスキルも違う。
コモディティー商品なら値段だけの勝負だが、ハイエンド商品だと製品のメリット、デメリットを競合商品と比較して説明し、値段に見合う価値があることを小売店の人たちに納得してもらわないと売れないことがわかった。
とすると、自社のハイエンド製品の販売網を手に入れるためには、
・そうした販売網を持っている会社を買収してしまう
・そういう会社と提携する
・自らハイエンド商品販売網を立ち上げていく
という3つの選択肢しかないという仮説ができる。
さらに、調べてみると、全米にハイエンド商品の販売網を自力で築くには3~4年の期間がかかるようだ。
そんなことをしていると、今持っている有望な商品の商機を逸してしまうことになる。
だから、買収または提携をするのがベターな選択肢である。
アメリカのハイエンド商品を売っている競合会社を見ても、中堅クラスの3社の業績は低迷しているから、自社の製品を持っていけばなびいてくるところがありそうだ。
あとは、買収の話をまとめる時間的余裕があるかどうかで、買収という選択肢をとるか、提携という選択肢をとるかを選んでいけばよい。
提携しておいて、自社の製品が相手の会社の売上の大きな比率を占めたところで、製品を引き上げることをちらつかせながら、安い金額で買収するという選択肢もある……。
こんな感じで、ざっくりと仮説を作って見るのだ。大まかでよい。こうして仮説を作っても、目星をつけた3社の反応はまったくの未知数であり、どう反応してくるかはわからない。だから、この段階でいくら精緻に仮説を練っても仕方がないのだ。
だから、仮説作りは大まかでよい。
材料を料理して、何らかのストーリーを早く作り上げてしまうことが重要だ。