機関投資家はもちろんだが、個人投資家であっても、お金の運用に取り組む際に情報が重要だ。情報というと、いわゆるニュースやアナリストの調査情報をイメージするかもしれないが、これらのいわば生の情報がどのような意味を持っているのかを解釈するためには、過去のデータとそれを分析するための仕組みが必要だ。

 株式投資でいうと、過去の株価と配当さらに株式分割や増資などから計算される収益率のデータが必要だし、個々の企業の財務データや、「過去の時点での将来の企業業績に対する予想」のデータなども必要だ。こうしたデータがないと、どのような情報が、どの程度影響を与えるのかを評価できない。

 また、こうしたデータを加工して、多数の投資銘柄を一つの「ポートフォリオ」としてまとめた場合に、どのようなリスクの大きさと性質を持つのかが分析できないと、ベンチマークと運用方針を与えられて運用する機関投資家は、十分な品質の運用を提供できない。

 自分が関心を持った企業を数十社調査して、気に入った会社の株を数十銘柄買う、といった運用は、株好きの素人の運用と大差ない。

 例えば、東証1部の銘柄を投資対象として、TOPIX(東証株価指数)をベンチマークに運用を受託する場合、東証1部の全銘柄に対して一定レベル以上の分析を行うのが責任上、当然のことだ。

 もちろん、現実的には、例えば、1人の運用者であっても、アナリストを含むチームであっても、東証1部の全銘柄に関して過去分も含めて、独自に公開情報をすべて読み込んで、加えて実地のリサーチも行うということは不可能だ。

 つまり、仕事として運用を真面目に行うなら、データとその分析ツールが不可欠だし、これらを使った分析を経ていないと、投資のアイデアが有効であるか否かを判断し、他人に説得力を持って伝えることができないのだ。