「君、学生なの?」
「バカ、こんなオバサンの学生いないよ」
「じゃあ、なんで日本に来れたの?」
「結婚よ。上海で日本人のおじいさんと結婚して、日本来たよ」

 ホナミは、れっきとした「日本人配偶者」だった。いわゆる結婚ビザによる来日で、留学ビザのような就労制限がなく、一部の中国人女性たちの間では“夢の切符”と言われていたものだ。とはいえ、デートクラブのような非合法な店で働いていいわけではないのだが…。

 90年代、彼女たちが言うところの「ニセモノの結婚」、つまり「偽装結婚」が中国人たちの間で大流行となっていた。

日中双方にうごめくブローカー
「偽装結婚」のカラクリ

 日本人配偶者の在留資格を得るには、大きく分けて2通りある。まずは留学などで来日してから日本国内で相手を見つけて結婚し申請する方法と、中国国内で日本人男性と結婚し、在留資格を得てから来日する方法である。

中国人のデートクラブ嬢写真はイメージです

 ホナミの場合、後者だった。

「私、勉強できない。年もおばさん。留学できない。じゃあ、どうする?結婚しかないでしょ」

 90年代の中国には、留学以外にも来日するさまざまな“裏口”があった。結婚もその一つだった。すべて“カネ目的”である。

 留学生の資格は取れなくても、結婚すれば日本に住める。このようにうたう結婚斡旋所の類が、上海などの大都市を中心に雨後の筍のように林立し、日本で“一山当てたい”女性たちが押し寄せた。

 結婚相手の男は、日本側のブローカーが送り出した。嫁不足で悩む、過疎農村の高齢男性などが多かった。日中のブローカーともに、利用者から数百万円という法外な仲介料を取り、大儲けしていた。

 ホナミの相手は当時60歳近い、精神病歴のある無職の男性だった。「当時、私は中国人のダンナさんがいたよ。でも、お金を稼ぐために、ダンナさんと話し合って、日本人と結婚することにしたの。だからダンナさんと離婚して、独身証明書を取って、上海市内のホテルのロビーで日本人男性と面接したの。会ってすぐに結婚を決めた。相手は誰だってよかった」