しかし、バブル崩壊後、多くの企業が海外進出のノウハウを自ら得るとともに、コスト削減を進めた結果、売り手と買い手が直接取引をすることが増えてきたため、トレーディングだけでは大きな成長を見込むことが難しくなってきました。

 そこで今度は、商社が事業を仲介するだけではなく、事業そのものを担っていくというビジネスモデルに変化していきました。これが「事業投資」です。

 投資というと、事業会社の株式を購入して配当を得たり、株価を高めて売却益を得たりというビジネスをイメージしますが、商社の事業投資は、それだけではなく、経営そのものに深く関わり事業の成長をサポートします。

 例えば、伊藤忠が手掛ける事業投資でよく知られるものとして、コンビニエンスストアのファミリーマートがあります。業界再編が進むコンビニ業界で経営の効率化や他業種との連携、さらにはサークルKサンクスとの統合など、国内外で培った事業経営のノウハウを活用して、実事業の舵取りを支援しています。

 加えて、昨今多くの商社が力を入れて取り組んだのが「資源投資事業」です。資源価格が低い間に資源販売の権利を得た商社は、2000年ごろからの資源価格高騰によって巨大な利益を生み出しました。

 一方、資源投資事業は、資源価格の上下に大きく影響を受けます。よって、先述した三菱商事や三井物産の赤字も、この資源価格の下落に大きく起因しています。

他の商社と異なる道を歩んだ伊藤忠
鍵となる経営方針「か・け・ふ」

 他の商社が軒並み資源投資事業に大規模に投資するなか、伊藤忠も当然資源事業への投資を行います。しかし、伊藤忠に特徴的なのは、資源事業だけに依存したのではなく、「非資源事業」にも同時に注力することで、経営の安定を目指したことです。

 もともと強みのあった食品や繊維といった事業に加え、機械や生活資材といった事業に注力して事業の柱を複数持つことに成功しました。特に機械に関しては、2009年度と2015年度の利益を比べて13倍に成長しています。

 こうして非資源事業を2012年以降4年連続で増益させていく一方、資源事業に関しては、2015年に大手商社で初めてシェールガス事業から完全撤退するなど、リスクを含んだ事業をいち早く整理し、他の商社に比べて資源価格の下落の影響を低く抑えることができました。