【警告】「うちは相続税がかからない」は危険…数千万円にもなる超意外な資産ベスト5
本連載は、相続に関する法律や税金の基本から、相続争いの裁判例、税務調査で見られるポイントを学ぶものです。著者は相続専門税理士の橘慶太氏で、相談実績は5000人超。『ぶっちゃけ相続【増補改訂版】』を出版し、遺言書、相続税・贈与税、不動産、税務調査、各種手続といった観点から相続の現実を伝えています。2024年から始まった「贈与税の新ルール」等、相続の最新トレンドを聞きました。
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【警告】相続税がかかる「超意外な資産」ベスト5とは?
本日は「相続税」についてお話しします。年末年始、相続について家族で話し合う際、ぜひ参考にしてください。
「この資産、相続税がかかるから気をつけて!」――そう言われてまず思い浮かぶのは、預貯金や不動産、株式、マンションといった「いかにも財産らしい」ものだと思います。
しかし相続税の世界では、一般の感覚だと財産だと意識していないものや、「え、これも数えるの?」というものまで、きちんと評価して申告しなければならないケースが少なくありません。ここを見落としてしまうと、「相続税はかからないはず」と思っていたのに、あとから課税対象になることが判明したり、税務署から指摘を受けたりするリスクが出てきます。
今回は、専門家から見ると「当然、相続税の対象になる」という前提なのに、一般には見落とされやすい資産を、ランキング形式で5つご紹介します。
第5位:電話加入権
昔から固定電話を使っているご家庭では、「電話加入権って今も評価するんですか?」という疑問を持たれることがあります。かつては、電話加入権の標準価額が1回線あたり1,500円とされていた時期があり、金額としてはごくわずかで実務上のインパクトは小さい論点でした。ただ近年は、取引相場が事実上ないことなどを踏まえた整理が進み、個別に細かく値付けするというより「一般動産(家庭用財産)として一括評価の中に含めて扱う」方向が説明されています。
第4位:庭園設備
「こんなものにも相続税がかかるんですか」と驚かれやすいのが、庭に設置された石や灯籠といった庭園設備です。たとえば、立派な日本庭園を作っていて、大きな庭石や灯籠、枯山水のような意匠をしつらえているお宅の場合、そうした設備も本来は相続財産として評価の対象になります。庭園設備は「調達価額(同じ状態のものをその時点で入手するならいくらか)」をベースに、その70%で評価する、という整理が示されています。庭にこだわり、自分の好みで大きな石やオブジェを入れているような方ほど、庭にも財産として評価される部分があるという認識を持っておく必要があります。
第3位:リフォーム代金
たとえば被相続人が亡くなる少し前に、自宅の大規模リフォームを行い、リフォーム会社に500万円を支払っていたとします。支払った側の実感としては「もうそのお金は払ってしまって手元にないのだから、財産ではない」と感じるかもしれません。しかし税務上は「リフォームによって建物の価値が上がっている」という実態を重視します。実際、家屋の評価額はその分上昇しているはずですが、固定資産税の評価額は原則3年に1度しか見直されないため、リフォーム後すぐには反映されません。そこで相続税の計算では、固定資産税評価額がリフォーム(増改築等)の内容を十分に反映していない場合、増改築部分の価額を別途見積もって加算する扱いがあります。近隣の類似家屋などを参考に評定し、参考がない場合には(再建築価額から償却費相当額を控除した額)の70%を用いるとされています。「出ていったお金だから関係ないだろう」とノーガードになりやすいところですが、実務上は専門家ですら見落とすことがある論点です。
第2位:未収配当金
「これも相続税の申告のときに計上するんですね」と驚かれやすいのが、未収配当金です。たとえば亡くなった時点ですでに配当を出すことが決定している株式を持っていて、実際に配当金が振り込まれたのは被相続人が亡くなったあと、というケースがあります。この場合、「入金されたのは相続発生後だから、これは相続財産とは別かな」と思ってしまいがちですが、税務上は「亡くなった日において配当を受け取る権利が確定していたかどうか」がポイントになります。権利が確定していたのであれば、その時点で本来もらえるはずだった配当金は「未収配当金」として相続財産に含めなければなりません。いつお金が振り込まれたかではなく、「権利がいつ確定したか」で見るという考え方は、慣れていないと見落としやすい点です。
第1位:借地権
代表的な“見落とされやすい資産”として、借地権が挙げられます。土地を地主から借り、その上に自分たちで建物を建てて住んでいるという方は決して少なくありません。この場合、多くの人が「土地は借りているだけで自分のものではないから、持っているのは建物だけ」「うちは土地持ちじゃないから、相続税は関係ないはず」と考えがちです。しかし、地主に地代を払って土地を借りているということは、その借りている人には「借地権」という権利があり、この借地権が相続税の課税対象になります。しかもその評価額がなかなかの曲者です。たとえば土地全体の価格が1億円と評価されるような住宅地の場合、借地権の価格はおおむね6~7割程度と言われており、6000万~7000万円といった規模の評価になることもあります(評価額は土地により異なります)。「自分名義の土地はないから相続税はかからないつもりでいた」という人でも、借地権だけで何千万円分もの財産があるとされ、「しっかり相続税がかかりますね」という結論になることも珍しくありません。
「うちは大丈夫」という油断は危ない!
このように、「借地権」「庭園設備」「電話加入権」「未収配当金」「リフォーム代金」などは、普段の生活ではあまり“資産”として意識されていないものばかりです。しかし相続税の世界では、それぞれにルールがあり、きちんと評価して計上することが求められます。
とくに借地権のように一気に評価額が膨らむものや、リフォームや庭園設備のように積み重ねるとそれなりの金額になってくるものは、「気づいたときには非課税だと思っていたラインを越えていた」ということにもなりかねません。「うちはマンションと預貯金くらいだから大丈夫」「株と土地さえ押さえておけばいいだろう」と決めつけず、「もしかして、これも相続税の対象になるのでは?」と感じるものがあれば、一度専門家に相談して確認しておくことが大切です。
(本原稿は『ぶっちゃけ相続【増補改訂版】』の一部抜粋・加筆を行ったものです)







