EUで維持されてきた「人の移動の自由」は終了させ移民は制限するが、EUとの貿易は離脱後も続け、農産品や工業製品といった「財(モノ)」の取引は、EUと共通の規格や基準を規定した新ルールブックを締結し、英EUの「自由貿易圏」を作るというものだ。

(詳細は12日に公表された白書”The Future Relationship Between The United Kingdom and The European Union”で確認できる)

 一方で、EU以外の国との自由貿易協定(FTA)交渉を積極的にすすめ、EUを離脱した後には環太平洋協定(TPP)への参加も視野に入れていることも明確にした。

 移民を制限するが、モノの貿易はこれまで通り自由に、という英国に都合のいい「新方針」をEUが受け入れる可能性は低い。加えてブレグジットの先行きを見えなくしたのが、保守党内の「強硬離脱」派の造反だ。

「新方針」は、いったんは閣僚会議で合意されたが、これまで強硬な姿勢で離脱交渉を牽引してきたデイビッド・デイビス担当相とスティーブ・ベーカー副大臣が、8日になって「メイ首相の方針を支持できない」として、辞任。翌9日には同じく強硬離脱派のボリス・ジョンソン外相も「英国の夢は死につつあり、我々は植民地に成り下がろうとしている」と辞任した。

 仮にメイ首相の新方針をEUが認めたとしても、EUが英国と新ルールを策定するコストを支払うのか、という点は疑問であり、結局はこれまで通りのEUの規制を踏襲する形になる可能性が高いと考えられる。

 だとすれば、これまで英国が掲げてきた「単一市場と関税同盟から撤退」し、貿易での主導権を取り戻すというブレグジットの大義は単なる張りぼてとなり、EUとの通商関係は元の木阿弥になってしまう、という懸念が強硬派の間で広がった。

 メイ首相はその後、党内の反発を鎮め議会での過半数の賛成を得るため、英国とEUの関税徴収権をめぐる項目など4項目について、強硬派の主張を受け入れて内容を修正。白書は16日に上下院を通過した。

 だがその後も、内容に不満を示したガット・ベブ国防省閣外大臣が辞任するなど、今回の方針転換を機に10名以上の保守党メンバーが要職ポストを辞任する事態になっている。

 閣僚らの辞任が今後、メイ首相に対する辞任要求、あるいは総選挙を求める動きに発展すれば、その間のEUとの離脱交渉が停滞することは避けられそうにない。

 2017年3月、メイ首相がEUの基本条約50条に基づいて、正式に離脱を宣言してから2年となる2019年3月29日が、離脱交渉期間として確保されているデッドラインだ。