スズキの業績が好調だ。日本や欧州、アジアで四輪車販売を伸ばし、特にシェア50%を握るインドでは無類の強さを誇る。だが、その成長のひずみとして、完成検査の不正でずさんな管理体制が明るみに出た。(「週刊ダイヤモンド」編集部 重石岳史) 

 スズキの2018年4~6月期決算。第1四半期としては過去最高の約86万台を販売し、増収増益を記録。通期の売上高は同社史上最高の3兆8000億円、当期純利益は2年連続の2000億円超えを目指すが、その目標達成に向けて好スタートを切った形だ(図(1))。

 成長のけん引役は、今やスズキの代名詞となったインド市場だ。

 インドの新車販売台数は昨年、前年比10%増と大きく伸びて400万台を突破。ドイツを抜いて、中国、米国、日本に次ぐ世界第4位に躍り出た。

 この巨大市場の成長とともに同国でのスズキの販売台数も年々拡大し、17年度は165万台を超えた(図(2))。17年のインド乗用車市場におけるスズキのシェアは50%に達し、他メーカーの追随を許さない圧倒的な知名度と販売網を誇る。また全体需要に大きな伸びはない日本市場でも、スズキは15年度以降、販売台数を積み増している。

 スズキの主力である軽自動車は低価格が故に1台当たりの利幅が薄いが、スズキ車の平均卸単価は08年度の約117万円から、17年度には約143万円まで上がっている(図(3))。

 これは、より高価な登録車の販売が増えていることが大きい。「ソリオ」や「スイフト」などの登録車がヒットし、新車販売に占める登録車の割合は2割近くに達している。

 単価の向上により、1台当たりの収益も増えた。つまりスズキは今、軽自動車中心の薄利多売のビジネスモデルから、登録車販売をミックスした“多利多売”へ転換しようとしているのだ。

 ちなみにアジア地域でもスズキ車の平均卸単価は上昇傾向にあるが、それでもインドでは76万円にとどまる。こうした低い単価でも収益を上げ続けられることこそが、他メーカーがまねできない、インドにおけるスズキの強さに他ならない。