VW提携解消で自己資本比率低下
人材の質量強化急務

 だが、スズキに財務上の課題がないわけではない。それが、同業他社に比べて低い自己資本比率だ。

 スズキは15年に独フォルクスワーゲン(VW)と資本提携を解消し、VWが保有していたスズキ株を全て買い戻すことになった。その際に使った自己資金が約4800億円。それまで45%超を維持していた自己資本比率が一気に10%以上低下し、財務を毀損することになった(図(4))。

 自己資本が乏しいと必要な投資もままならない。それはグローバルな競争が激化する業界において、命取りになる。

 インドで現状の成長が続けば、30年には年間新車販売台数は1000万台に到達する見通しだ。スズキが50%のシェアを維持しようと思えば、500万台の販売が必要となる。

 スズキは17年にグジャラート第1工場を稼働したが、インドにおける現状の生産能力は年間175万台にすぎない。同工場を拡張し、19年には200万台体制を築く計画だが、それでも500万台には到底及ばない。

 またインドで今後、電動化が進むのは必至だ。スズキは30年に想定する500万台の販売台数のうち、150万台は電気自動車(EV)に転換すると試算する。

 VWに代わってタッグを組むことになったトヨタ自動車から技術支援を受け、20年ごろにインド市場向けEVを投入する計画だが、ライバルメーカーに比べて“周回遅れ”の研究開発投資を加速させなければならない。

 インド市場への対応について、スズキの鈴木修会長は「スズキにとって(販売の)質量共に未知の世界が待っている。経営陣も発想を変えないといけない」と気を引き締める。その鈴木会長が特に強い危機感を持つのが「人材の不足」だ。スズキは現在、インド全土に約4万人の販売員を抱えるが、鈴木会長は「想定では12万人以上のセールスマンが必要」と言う。

 販売面だけでなく、生産の現場も人材が追い付いていない。今月発覚した燃費・排ガスの抜き取り検査をめぐる不正では、検査に詳しい管理職が工場に配置されておらず、わずか3人の検査員に問題発生時の判断が委ねられていたというずさんな実態が明るみに出た。

 これは必要な設備投資や人材配置を怠った結果であり、先に不正が発覚した日産自動車やSUBARU(スバル)と同様、国内販売への影響は避けられない。

 長男の俊宏社長は会見で「従業員の教育とチェック体制を充実させる」と述べたが、スズキはインドにおける人材確保だけでなく、足元の生産現場における質の向上を早急に図る必要がある。

 鈴木会長はかつて「中小企業のおやじ」を自称したが、スズキは今やグローバルに展開する大企業に成長した。その成長に見合った投資や人材育成を急がねば、「未知の世界」への対応どころか、成長の歯車が逆回転しかねないリスクもはらんでいる。