今回の“トルコショック”発生の背景
ブランソン牧師をめぐる米国とトルコの対立

 2016年7月、トルコでクーデター未遂事件が起きた。これに関与した疑いでトルコ当局に拘束されている米国人アンドリュー・ブランソン氏は、キリスト教福音派の牧師である。トランプ大統領にとって、キリスト教福音派の人々からの支持は、政権維持のための生命線といえる。トランプ氏はトルコのエルドアン大統領に、ブランソン氏の早期解放を求めてきた。そのために、トランプ氏はエルドアン氏からの要請に応えて、イスラエルで拘束されたトルコ人女性の解放に取り組んだのである。

 エルドアン政権は、クーデター未遂事件の首謀者は在米イスラム教指導者のギュレン師と判断し、トルコへの送還を米国に求めているが実現していない。加えて、トルコの国営銀行ハルクバンクはイラン制裁を理由に、米国財務省から捜査を受けている。強権体制を敷きたいエルドアン大統領は米国の対応に反発し、ブランソン牧師を拘束し続けている。

 この状況を受けて、トランプ大統領はトルコの内相と法相に制裁を科した。その上、トルコ産のアルミに20%、鉄鋼に50%の関税を課すことも決めた。それがトルコリラの急落につながった。トランプ大統領としては、トルコへの強硬姿勢を示すことにより中間選挙に向けた米国内での支持率引き上げを狙ったものとみられる。

 トランプ大統領の強硬姿勢に対して、米国内の企業からは反論が出ている。関税引き上げは、パイプライン用の特殊鋼材をトルコ企業から仕入れている米国企業に打撃を与える。トランプ政権が各国に圧力をかける手段として関税引き上げを重視し続けるのであれば、米国企業の資材調達コストは増加し、業績が悪化する恐れもある。

 また、共和党の牙城オハイオ州の補欠選挙では、当初、圧勝が予想された共和党候補が辛くも民主党候補に勝利した。それは、トランプ大統領の強硬姿勢への懸念が高まりやすくなっている兆候とも考えられる。