今後の“トルコショック”の波紋
世界経済は厳しい局面に

 トルコリラの急落=トルコショックから示唆されることは、エルドアン・トルコ大統領の強権的な政策運営には、大きなリスクが伴うということだ。

 このまま、米国とトルコ両国の強硬姿勢が続くと、世界の政治・経済の状況は最終的にはかなり厳しい局面に追い込まれることが考えられる。その中でトルコが経済を安定させていくことは難しい。トランプ大統領が人気取り政策としての対外強硬策を強化する場合には、リスク回避からトルコリラへの売り圧力が高まり、トルコ国内ではエルドアン大統領への不満が高まると予想される。

 それは、世界の政治・経済情勢に波紋を投げかけることになるだろう。

 政治的には、追い込まれたトルコがNATO(北大西洋条約機構)の一員であるにもかかわらず、ロシアに近づく可能性がある。それは、世界情勢を不安定化に向かわせる要因だ。米国とその同盟国であるトルコの対立がさらに深まる場合、トランプ政権と距離をとる国が増えてもおかしくはない。それは、ロシアだけでなく、中国を勢いづかせることになるだろう。

 また、経済面で見ると、既に金融市場では“トルコの次”が取り沙汰されている。経常収支が赤字であり対外債務のGDP比率が高いアルゼンチン、南アフリカ、インドネシアなどの通貨は、リラ安とセットで売られた。トルコリラへの売り圧力が高まりやすい状況は、新興国経済に大きなマイナスとなることが懸念される。

 もう一つ見逃せないのが、トルコの政治・経済への懸念は、欧州地域の金融機関経営にもマイナスの影響を与えることだ。8月10日のリラ急落を受け、スペインBBVA、イタリアのウニクレディト、オランダINGなど、トルコ向けの債権残高が相対的に多い欧州金融機関の株価が下落した。それは、EU域内だけでなく、米国の大手金融機関の株価下落にもつながった。エルドアン大統領の強権重視姿勢は、リラへの売り圧力上昇だけでなく、新興国経済の悪化や欧州金融機関の不良債権問題などへの懸念を高めるリスク要因といえる。