そういう時代になると、「お金がいい? 土地がいい?」と問われると、「お金」と答える人が多くなるのは当然です。しかも、相続した家に住まないのですから、コストがかかるだけ損になってしまいます。そうして、きょうだいで「実家」を押し付け合う時代になったわけです。

売るに売れない厄介な「実家」

 誰も済まなくなった実家を、あなたはすぐに売ることができますか? おそらくほとんどの人は「できない」と答えるでしょう。それが当然の心情だと思います。実家というのは、自分が生まれた家であり、親と一緒に長年過ごした思い出がしみついた家です。それを、親が亡くなって、誰も住む人がいなくなったからといって、すぐに売るという割り切りはできないのが普通の人の考え方です。

 ところが、雑誌の相続特集や不動産コンサルタントが著した単行本などでは、「住まない実家はすぐに売ったほうがいい」とよく書かれています。確かに、税制上では早めに売ったほうがいい場合が多いのです。誰も住まなくなっても、不動産を相続した人には固定資産税がかかりますし、維持費もかかります。売ってしまえば、そうした費用はかからず、面倒がありません。

 しかし、実際には少なくとも1年はそのままにしているケースが圧倒的です。もちろん、きょうだいにお金を払うために土地を売らなくてはならないなど、緊急にお金が必要なために、すぐに売る人もいますが、それは全体の2、3割程度です。

 相続のスケジュールを考えても、なかなか売る決心がつかないことは、よくわかります。なによりも相続税の申告期限が、亡くなってから10ヵ月です。長いようでいてあっという間です。多くの場合、10ヵ月ぎりぎりまでかかりますから、それまでに売る例はあまりありません。

 そして、当然ながら、名義変更はきょうだいの間の遺産分割協議が終わってからでなくてはなりません。となると、少なくとも土地や建物の名義が変わるのは、早くて1年近く後になるわけです。結果的に、少なくとも一周忌までは売る余裕もないというのが実情なのです。

 もっというと、近隣から苦情をいわれて、どうしても維持できなくなって、やっとあきらめがつくというケースが多いのです。