友人に、Jリーガーのセカンドキャリアの世話をしている人がいます。彼らはJリーガーを集めて最初にこう言明するそうです。

「サッカーで最後まで生きられるなどと、決して思うな」

 考えてみれば、これは会社の中の出世競争でも同じです。すべての優秀な社員が出世競争に勝ち抜き、社長になれるわけではありません。多くはどこかで挫折します。どこかで負けることになります。

 負けを認める。自分は一度死んだのだと思う。しかし、本当に死ぬわけではない。どっこい自分は生きている。これからも生きていける。だから、別のフィールドを探すのです。すでに負けたフィールドにはこだわらないのが生きる道です。

「これはまさに終戦だな」と思いました。

 日本人は第二次世界大戦で負けを認めました。その後、異なるフィールドで再起をかけ、復興しました。それが戦後の驚異的な経済成長につながったのです。

 確かに全身全霊を懸けた戦いに負けました。しかし、一つの戦いに負けただけで、命はまだある。この、生きている、ということを大切にする必要があります。

 死は、日本人の美学です。しかし、それは本当の死ではないのですから、しばらくしたら、そこから立ち直ればいい。そして、夢の続きを、違う生き方で見出せばいい。そう思います。一度死に、それを認識した上で、再度蘇る。終戦の日の甲子園でそんなことを考えていました。

(明治大学専門職大学院グローバル・ビジネス研究科教授 野田 稔)