株式会社では、社長だからといって、すべてを自由に決めていいわけではありません。会社員であっても、会社の仕組みについて知らない人も意外といるもの。前提知識がなくても、経済のことがざっとわかるように解説した『新版:今までで一番やさしい経済の教科書』。本連載では、株式会社のお話をします。

会社の中で一番偉い人は誰?

 2011年、オリンパスと大王製紙でそれぞれ経営者が「事件」を起こしました。オリンパスでは、1999年以来、損失(会社の損)を隠すために、会社の業績について「嘘の報告」をしていました。本当はもっと業績が悪いのに、嘘をついて「良く」見せていたのです。

 また、大王製紙では、前社長が別の企業に100億円を超えるお金を貸しこんでいたことが判明しました。これらの「事件」が世間を大きく騒がせました。

 なぜ、この事件がこれほど話題になったのか。

 「社長が決めたんだから、いいんじゃない? 社長が会社のことを決められるのは当然で、倒産しても社長の責任なんだから」と思う人もいるかもしれません。

 でも、それは違います。なぜなら、オリンパスも大王製紙も「株式会社」だからです。株式会社では、社長だからといって、すべてを自由に決めていいわけではないのです。

 これを理解するには、まず「株とは?」「株式会社とは?」「株主とは?」、さらには「上場会社とは?」を理解する必要があります。

株・株式会社とは?

 株とは、「その企業にお金を出資したことの証明書」です。そして、その株を発行して元手を集めた会社を「株式会社」といいます。世界で最初の株式会社は、1602年設立の「オランダ東インド会社」だといわれています。そのときに初めて株式会社が生まれました。

 株式会社ができる前にも会社自体はたくさん存在していたわけですから、同じ形態のままでも良かったのでは、とも感じますね。

 でもそれはできなかったのです。なぜかというと、社長ひとりのお金では、やりたい事業ができなかったからです。

 社長の貯金だけでは会社で必要な経費を払えなかった。裏を返すと、社長ひとりでは到底できないような大規模の会社をつくろうとしたからです。だからたくさんの人にお金を出し合ってもらって、みんなで会社をつくり、みんなで経営しようとしたわけです。

 また、ひとりでは到底負えないようなリスク(損をするリスク)でも、みんなで分担すれば負えるようになります。大きいビジネスをしようと思えば、それだけ失敗したときの損も大きくなります。だから「株式会社」が必要だったのです。