「上場会社」とは?

 ところで、オリンパスや大王製紙の「事件」がこんなにも大きなニュースになったかというと、2社とも上場会社だからです。

 上場企業の場合、利害関係者が非常に多く、社会的な問題が大きいからです。ちなみに、上場会社とは、株式を広く一般の人が売買できるように「登録」された企業のことです。

 上場会社を理解するために、まず株式会社の「株」の売り方・買い方について説明しておきましょう。

 株式会社は、株を発行して、投資してくれた人に渡します。株を受け取った人は、その株を第三者に売ることができます。株を買いたい人と売りたい人で話し合って売買しても構いません(これを「相対取引」といいます)。

 ただ、上場企業の株は、必ずしも買い手を自分で探す必要はなく、証券取引所(取引をしたい人が集まっている場所)に行き、「買いたい人いますか?」と広く募集することができます。その証券取引所に「登録」してある企業の株であれば、誰でもそこで取引できるのです。

 ここがポイントです。上場企業の株は誰でも買えるようになるので、株主の数が非常に多くなります。オリンパスの株主は1万7720人、大王製紙の株主は3159人もいました。これらの株主全員が「被害」を受けました。だから大きな事件になったのです。

株で損をしても自己責任では?

 「株を買って損をしても自己責任だ」と聞いたことがある人もいると思います。

 たしかに「この会社は将来性がある!」と思って買った株が値下がりして損をしても、それは「そう判断した自分の責任」です。

 しかし、経営者が不正をした場合は別です。経営者が不正を働き、世間に対して「嘘の報告」をしていたら、それは確実に経営者が悪いのです。世間を騙していたわけですし、世間も外からそれを見破るのは困難です。

 上場企業の場合、お金さえ払えば、誰でも株主になることができます。その企業の内情をまったく知らない「素人」でも株主(会社のオーナー)になれます。それゆえに、上場企業の経営者は、世間を騙さないように、「投資のプロ」以外の人にも誤解を与えないように、厳格なルールにのっとって経営を行うべきなのです。

 そのルールに違反した場合には、オリンパス、大王製紙の経営陣のように訴えられることもあります。経営者が能力不足で会社がつぶれるのは「仕方がないこと」ですが、経営者が嘘をついて世間をだますのは「許されないこと」なのです。


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