ただ、今後も経営は、事業展開の遅れ、資金繰りに関する臆測、マスク氏の言動などに振り回される局面が続くだろう。

 一部では、モデル3の生産の遅れはマスク氏自身にとっても予期せぬ事態であり、同氏がかなりのストレスを抱え込み、精神的に追い込まれた状態にあるとの観測もある。崖のふちを歩くような、不安定な状況が続くだろう。

 その状況下、テスラから距離を置く株主が増えている。

 その理由は、テスラの取締役会がマスク氏のワンマンぶりを抑えることができず、結果的に事態の混乱を生んだとの見方が増えているからだ。米国の株式市場では受託者責任への意識が強い。そのため、コーポレートガバナンス(企業統治)が適正に機能しているか否かは、機関投資家が投資先企業を評価する重要な項目となっている。

 現状、多くの投資家はテスラの経営に不満と懸念を募らせている。中には保有してきた株式を売却した機関投資家もあるようだ。一方、テスラのガバナンス体制に不安を感じつつも、事態の改善を期待して株を保有し続ける機関投資家も相応にいるようだ。

 その中、ステークホルダー(株主や従業員などの利害関係者)が堅実なタイプの経営者人材をテスラに招聘し、事業展開をスムーズ化させる動きが出ることが考えられる。そうなればマスク氏には退任の可能性があるかもしれない。そのほかにも、大手自動車メーカーがテスラの買収を検討する可能性もある。テスラの経営は重大な局面を迎えている。

(法政大学大学院教授 真壁昭夫)