日銀内の「本音」は、変動幅を広げ、さらには長期金利の誘導目標を少しずつ上げていこうというもの。まだ先とはいえ、異次元緩和からの「出口戦略」を念頭に置きながら、まずは景気後退局面に備えて利下げできる“余地”を作っておきたいという思惑だ。

 だが黒田総裁は、金利変動を柔軟化させることについては認めたものの、金利水準の上昇や、引き上げの意図に関しては否定。あくまで国債市場が機能しなくなっている「副作用への対応策だ」と強調するにとどまった。

「緩和縮小」による正常化とも、「緩和維持・強化」ともとれる“政策修正”はそれだけではない。

 ETF(上場投資信託)の買い入れ方針でも、年間6兆円増の枠組みは維持しながら、「買い入れ額は上下に変動し得るものとする」として正常化に向けた道筋をつける一方で、買い入れ増額の余地も残し、方向感を曖昧にした。

 一方で「緩和の枠組み強化策」として、新たに政策金利の「フォワードガイダンス」を導入。黒田総裁は「当分の間、今の極めて低い長短金利の水準を維持することを想定している」とし、「必要があれば追加緩和もあり得る」とまで言い切った。

 もともとフォワードガイダンスは、中央銀行が目標にする経済状況や時期を示して、それに至るまでの金融政策のスタンスを約束したり、見通しとして示したりして誘導する手法。だが、すでに日銀は、実現時期こそ明言しなくなったものの、「2%物価目標」を掲げている。

 にもかかわらず、あえて屋上屋を架す“仕掛け”を加え、「緩和の枠組み強化」を強調したわけだ。

意図を曖昧にし自由度確保狙う
「量的緩和」からの正常化時と酷似

 意図的に曖昧な表現や言い回しをして言質を取らせず、政策の自由度を確保して金利などを望ましい水準に誘導するやり方が、「建設的曖昧さ」(Constructive Ambiguity)と呼ばれ、金融政策の“要諦”とされた時期があった。

 これを実践した“元祖”は、共和党、民主党政権の4人の大統領に仕え「金融の神様」「マエストロ」と呼ばれたアラン・グリーンスパン元FRB議長(1987~2006年在任)だが、今回の日銀の“玉虫色政策修正”はそれを彷彿させる。