コストと面倒さで
消防が笛吹けども踊らず

 その点、消防庁はどのように認識しているのか。消防庁予防課は取材に対し、次のように回答した。

「負荷運転が行われていないという指摘は以前から挙がっており、2016年12月には都道府県の消防本部に対し、チェックの厳正にするよう通知しました。小さな本部ほど国の動きが浸透しづらいところがあるとは思いますが、基本的にはかなり細かく指導しているはずです。少なくとも、1年とか2年前とは状況はだいぶ変わってきています」

 それでも、法に定められた点検を行わない施設が大量に存在するのは、厳然たる事実だ。消防が指導強化を掲げながらも現状がなかなか改善しないのは、何か特別な事情でもあるのだろうか。

 これについて、あるビル管理会社の幹部は、「消防は法令を作った後になって、負荷運転試験が思ったほど簡単ではないことに気づいたのかもしれません」と指摘し、こう続けた。

「負荷運転試験には、全館停電を伴う『実負荷運転』と、試験機を接続して行う『模擬負荷運転』があります。実負荷は、利用者が24時間いる病院やホテルなどでは実施が難しいし、コンピューターが常時稼働しているような施設からも敬遠される。片や模擬負荷は、従来型の試験機が軽トラックの荷台から降ろすのも大変なほど巨大で、施設への搬入が難しく費用も高額になりがち。だから消防も、施設側に強く指導できずにいるのでしょう」

 もっとも、模擬負荷運転は以前ほど難しくはなくなっているとの指摘もある。

「試験機は、今ではだいぶ小型になっている。搬入が楽で人員も少なくて済むので、模擬負荷運転をより簡単に行えるようになっているんです。また、非常用発電機は負荷運転以外にも、パーツのメンテナンスや交換などの点検項目がたくさんある。それらをパッケージとして請け負えば、コストをかなり低減させられる」(前出のFTGの安藤室長)

 記事冒頭の写真を見てほしい。手前の男性の足元に置かれているスーツケース大のものが、小型の試験機だ。写真を提供してくれたワイズクリーンエネルギー協会の江藤晃一営業部長によれば、「重さは40~50キロほどで、従来型の数分の1。ほとんどの場合、搬入から搬出まで含めて作業は半日もかかりません。『負荷運転試験は大変だ』というのは、もはや過去の常識」なのだという。