島村 実地研修とはどのような研修ですか。

轡田 たとえば、バックオフィス部門の人間が営業の現場を体験してみるとか、逆に営業の人間が業務部門を経験してみるといったもので、3つの現場でそれぞれ3~4日間、普段とは別の仕事を体験します。

島村 他部署のリアルがわかり、同期同士の、よりフォローし合おうという気持ちも高まりそうです。

轡田 これだけ研修があれば、1、2ヵ月に一度は新入社員の顔を見ることになるので、人事としては、状況がよくわかるというメリットがありました。しかし、現場視点では、本人も周囲も「また研修か」という思いはあったでしょう。

 それに、一部の研修では、研修であるのにもかかわらず「全国に散った同期と久しぶりに合えて良かった」という感想ばかりが聞かれるようになったのです。得てして、フォローアップ研修などは同窓会のようになりがちですが、本来の主旨とは違うな、と思うようになりました。

一度増やした研修をやめる
判断はとても難しいもの

島村 そもそもなぜ、そこまで研修が増えたのでしょうか。

轡田 これは新入社員研修に限った話ではないのですが、人材育成は重要であり、「この職能の段階でこんな知識・スキル・マインドを身に着けるべきだ」という概念で教育研修体系を組んで来ました。そうすると、「この知識も必要だ」「このマインドが継続しないからフォローアップ研修を入れよう」という議論になり、必然的に増加してきたのです。一度組み込んだ研修を辞めるという判断は、なかなか難しいものです。

島村 たしかに、一度増やした研修を辞めるという判断はとても難しいですよね。ほかに、研修が増えすぎたことのデメリットはありましたか。

轡田 受け身を助長させてきたのではないかと思っています。特に新入社員については、こちらがあまりに教えようとすると、まるで学校で授業を聞くような姿勢に終始してしまいます。しかし実際のビジネスは、自分から主体的に取りに行かなくてはなりません。教育研修を手厚くすることは「口を開けて待っていればいい」という誤った認識を与え、主体性を養う機会を奪っていたのではと、これは個人的にですが、思います。