「1億円で物件を仕入れたら、1億2000万円くらいで投資家に販売します」と言い、これまでに5000万円から5億円の不動産を約100棟、投資家向けに販売してきた。売るのは個人投資家だけ、医者や公務員、上場企業社員などが多い。

 ここ数年の不動産投資ブームでスルガ銀行が担った役割について社長はこう語る。

「不動産の取引は、物件情報ありきです。物件の数は限られていて、その奪い合いなので。不動産投資がブームだと聞いてから興味を持つような人が、後から来て良い物件を買えるわけがない。そこで融資が可能かどうかの回答が早いスルガ銀行が役に立つのです」

 ここでスルガ銀行のザルの担保評価が使えたのだという。投資用不動産を購入する際は、買い付け証明書を出してから、銀行やノンバンクと金銭消費貸借契約を交わし、融資を受けて残金決済をする流れだ。通常なら1~2ヵ月が必要だ。

 しかし、スルガ銀行の場合は1~3週間ほどで融資可能かどうか回答がある。

「相続などで、売る側も早く売却したい事情がある。だから、スルガ(銀行で融資を受ける)のお客を優先して契約してくれることが多かった。中には、始めから『スルガ銀行で融資』が売買条件になっていることもありました」

 ここ数年は良い売り物件が市場に出ると、数日で複数の投資家から購入希望が入る。他の投資家をスピードで出し抜くためにスルガ銀行が重宝したということになる。

 スピードだけでなく、スルガ銀行に申し込めば9割以上は審査が通ったという。

 しかし、三為業者が利益を乗せ、その上、他行にはない速さで正しい担保評価をくだせるのか。独自の査定ノウハウがスルガ銀行にあったのだろうか。

 むしろシステム化を志向したり、外部調査会社を多用したりする他行に比べると、スルガの担保評価は属人的で遅れていたとの証言もある。

 不動産投資の界隈では、スルガ銀行の担保評価のザルぶりを活用したグレーな手法が横行するようになっていた。

投資家も与信の「甘さ」を利用
「スルガの毒抜き」は業界の常識

 スルガ銀行が不動産投資家に急速に注目され始めたのが2008年頃のことだ。リーマンショック以降の金融不況の中で、スルガ銀行だけが積極的に不動産投資向けの融資を続けていたからだ。