『週刊ダイヤモンド』9月8日号の第1特集は「まだまだあった不動産投資の罠」。特集取材チームは世の中にいくもある代表的な不動産投資の罠として、「かぼちゃの馬車」問題を徹底取材しました。今回は、「かぼちゃの馬車」問題をはじめとした、不動産投資の闇を知りつくし、自らも深く関わってきたある不動産仲介会社社長の匿名インタビューを、特別にお届けします。
今回、匿名を条件に暴露しました。今回、匿名を条件に暴露した Picture:DW,iStock/gettyimages
<解説>
「かぼちゃの馬車」とは、2018年5月に破産した不動産会社、スマートデイズ(SD)が展開していた投資用シェアハウスのブランド名。SDは物件を一括で借り上げる「サブリース」という家賃保証によって、低リスクで利益を得られるとうたい、次々と個人投資家にシェアハウスを販売していた。しかし、SDは2017年10月、シェアハウスのオーナー(個人投資家)へ家賃補償額の減額を突如通知。それがきっかけで、SDがオーナーとの契約の際に金融資産や契約書類などを改ざん、入居率(レントロール)の虚偽などが発覚した。
 さらにオーナーにシェアハウスの購入資金を融資していたスルガ銀行も、審査書類の改ざんなど不正融資が多数発覚。9月中にも創業家出身として約30年間にわたりトップに君臨してきた岡野光喜会長が、引責辞任する意向だという。
 SDとスルガが結託したスキーム(スルガスキーム)の罠に嵌り、破産状態に陥るオーナー(個人投資家)が続出。被害総額は2000億円規模になる見込みで、大きな社会問題となっている。

 「かぼちゃの馬車」、つまりスマートデイズのシェアハウスの一件で銀行からの融資が絞られ、売り上げが減ってビジネスが苦しくなったのは事実です。

 不動産仲介業ですが、営業マンに最大1億5000万円の年俸を払っていました。固定費が高いため、売り上げが減ると正直厳しいですね。

 われわれのような業者にとって、スマートデイズをめぐる一番大きな問題は、長年行われていた所得や資産が少ない人にも銀行に融資を付けさせる、“秘密のスキーム”がバレてしまったことです。

 当社でも、例えば1億円の物件をフルローンでお客さまに買わせる際には、銀行に対して1億2000万円の物件を買うと伝え、8割に当たる約1億円の融資を引っ張るいわゆる“蒸かし”をしていました。

 同じ物件で1億円と1億2000万円の2通の契約書を作るか、1億2000万円から1億円に契約額を減らす「減額合意書」に買い手にサインをさせておけばいいのです。

 銀行にバレた場合はリスクがあると説明して、納得させた上でね。まあ、買い手に法人を設立させておけば、買い手個人の信用情報は傷つかないですから。