100業種・5000件以上のクレームを解決し、NHK「ニュースウオッチ9」、日本テレビ系「news every.」などでも引っ張りだこの株式会社エンゴシステム代表取締役の援川聡氏。近年増え続けるモンスタークレーマーの「終わりなき要求」を断ち切る技術を余すところなく公開した新刊『対面・電話・メールまで クレーム対応「完全撃退」マニュアル』に需要が殺到し、発売即、重版が決まった。
本記事では、お客の「正当な主張」を「クレーム」と勘違いして、お客を怒らせてしまった事例を特別公開する。(構成:今野良介)
最初から「クレーマー扱い」しない
クレームが寄せられたら、その内容がどのようなものであっても、まずは「お客様の正当な要求」として、スピーディに対応することが重要です。
しかし、突発的なトラブルに遭遇すると、対応を誤ることがあります。
まず、次の事例をご覧ください。
------ホームセンターの事例-----------
ホームセンターで高齢の女性が転倒した。それに気がついた店員がかけ寄り、「大丈夫ですか?」と声をかけると、「ええ、大丈夫」と小声で答え、しばらくすると立ち上がって歩き出した。店員は、その後ろ姿を見送った。
ところが翌日、中年男性が店に怒鳴り込んできた。
「昨日、ここのフロアが水で濡れていて、母がすべって転んで骨折した。それなのに、何もしてくれなかった。いったいどういうことだ! 責任者を呼べ!」
この店の店長は、日頃から恐喝まがいのクレーマーに悩まされていた。女性が転倒したときの様子を店員から聞いて、「またか!」と舌打ちした。
そして、事務室で男性と面談し、きっぱりとこう言い切った。
「お母様には、スタッフが声をおかけしており、お元気そうでした。また、ご来店の時間に、フロアが濡れていたということはありえません」
しかし、実際は違っていた。店長の言葉で男性が激高したため、あらためてスタッフ全員から聞き取りしたところ、店員が女性に声をかける直前、清掃係がフロアの水を拭き取っていたと判明したのである。何かの拍子で、バケツの水をこぼしたようだった。
店長の思い違いで、この男性とのやりとりがこじれてしまい、会社としての正式な謝罪や治療費の負担などで、決着するまでに数ヵ月を要した。
(了)
このケースは、店長が日頃クレーム対応に悩まされていたために、最初からクレーマーだと決めつけたことが、事態を悪化させてしまった典型です。
最初からお客様をクレーマー扱いすれば、反感を買うだけでなく、「クレーマー扱いしやがって!」「なにか言ったらクレーマー扱いなの?」というお客様のさらなる不満を生み、対応を自ら長期化させることになりかねません。
クレーム発生直後の段階では、相手のお客様が「ホワイト」なのか「グレー」なのか「ブラック」なのかはわかりません。
顧客満足をベースにした「性善説」でスタートするべきです。
「明らかにカタギじゃない」
と思っても……。
また、強面のお客様に対して、「近寄らないで」というオーラを出して、失敗するケースも少なくありません。見た目や態度でクレーマーと決めつけ、相手を怒らせてしまうのです。
ある病院で、こんな事例がありました。