100業種・5000件以上のクレームを解決し、NHK「ニュースウオッチ9」、日本テレビ系「news every.」などでも引っ張りだこの株式会社エンゴシステム代表取締役の援川聡氏。近年増え続けるモンスタークレーマーの「終わりなき要求」を断ち切る技術を余すところなく公開した新刊『対面・電話・メールまで クレーム対応「完全撃退」マニュアル』に需要が殺到し、発売即、重版が決まった。

本記事では、クレームを長期化させないための「お詫び」の考え方を、具体例とともに特別掲載する。(構成:今野良介)

クレームの悪質性をはかる
「3点ピンポイントお詫び法」

クレーム対応は、まず「お詫びのひと言」がなければ、何も始まりません。

相手の言い分にどうしても納得がいかないとき、「なぜ、自分が謝らなければならないのか?」と反発したくなる気持ちはわかります。

また、謝罪することに抵抗感がある職種もあります。たとえば、医療現場では、医療過誤の申し立てを警戒して、患者やその家族への謝罪をためらう傾向があります。あるいは、外資系企業では、損害賠償責任の追及を恐れるあまり、謝罪に二の足を踏むことも多いようです。たしかに、「事実関係がはっきりしない段階でお詫びする必要はない」という考え方には一理あります。

しかし、少なくとも日本国内においては、お詫びの言葉を使わないでクレームを収束させることはほぼ不可能です。

「いったん謝罪すると、過失を認めたことになるので、安易にお詫びしてはいけない」という考え方は、クレームを長期化させるだけです。

ただし、お詫びするにあたっては、理論武装が必要です。非を認める正式な謝罪と、相手の怒りを鎮めてクレームを長期化させないためのお詫びを区別するのです。

具体的には、次のように、3つの観点からピンポイントでお詫びします。

(1)相手に与えてしまった「不快感」に対してお詫びする
→「ご不快な思いをさせてしまい、申し訳ございません」

(2)相手が感じている「不満」に対してお詫びする
→「ご不便(ご迷惑)をおかけして、申し訳ございません」

(3)こちらの「手際の悪さ」に対してお詫びする
→「お手間をとらせてしまい、申し訳ございません」

このような限定的なお詫びであれば、
「謝ったんだから、責任をとれ!」と詰め寄られたとしても、
「私どもの過失を認めて補償するという意味ではございません」
と、切り返すことができます。

言葉尻をとらえて「謝っているんだから、悪いと思ってるんだろ! だったら誠意を見せろ」などと強引に補償を求める相手は、悪質性が高いと判断してよいでしょう。

要するに、初期対応でのお詫びは、相手の怒りをクールダウンさせるツールであると同時に、クレームのレベル(悪質性)を測るバロメーターにもなるのです。

「何に対してお詫びするのか」を明確にする

初期対応では、お詫びとともに、「共感・傾聴」の姿勢を示すことが重要です。相手に共感を示すには、「あいづち」が効果的です。また、傾聴とは、相手の話を聞き流すのではなく、じっくり相手の主張に耳を傾けることです。

途中で相手の話の腰を折ったり、反論したりするのは厳禁。言い訳がましい説明で逃げようとすると、相手は「言いくるめられてたまるか」と反感をもち、さらなる怒りを買うことになります。

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