まず、まさに「忖度」という言葉が象徴するように、「モリカケ問題」では安倍首相や側近の政治家が収賄や政治資金規正法違反などの違法行為に手を染めた証拠が出てこなかったことがある。

 問題にされたのは、実務を担当した官僚による公文書改ざんや内部文書の信ぴょう性などだ。両ケースとも中心的な当事者が安倍首相と“特別な関係”にあると見られたことでクローズアップされたが、「首相の犯罪」が立証されなかったから、(反安倍感情が強い人を除いて)人々の関心を引き続けることはできなかった。

 第二に、モリカケが国政選挙での与党の敗北に結び付かなったことがある。昨年秋、モリカケ追及で盛り上がっていた野党側、特に(旧)民進党と「小池新党」の間のゴタゴタの隙をつく形で、安倍首相が解散総選挙に打って出て、勝利を収め、都議会議員選挙などでの自民党に対する逆風の流れがいったん止まった。

 来年の参議院選挙までしばらく間があり、「反安倍」の機運はそれによって沈静化した。

 第1次安倍内閣(2006~07年)の時のように、「この総理総裁では次の選挙が戦えない」という状況でなくなった以上、自民党の大勢が安保法制や働き方改革等の重要法案を成立させた現総裁を支持し、現状を維持しようとするのはさほど不自然なことではない。

 安倍政権を、[日本を戦争できる国にしようとする極右勢力の政権+お友達優遇の談合体質の政治+党内民主主義さえ根絶する独裁的体質]と見て“敵視”する人たちから見れば、「あれだけひどいことばかりやっている安倍首相への批判の声が強まらない今の自民党は異常」ということになる。

 だが、[現状に合わせた安保体制の補強+新自由主義的改革と景気回復の両立]を望む与党支持層からしてみれば、モリカケで細かい齟齬が見つかったからといって、無理に首相を交代させて混乱をもたらすのは愚かと考えるだろう。

 自民党支持層の間で、安倍路線ではダメだ、自民党は変わるべきという声が強まれば、石破氏などポスト安倍の有力候補への期待が高まり、総裁選もある程度盛り上がっただろうが、世論調査を見る限り、そうはなっていない。

若者は右傾化していない
社会の心理を読み違えた「反安倍」陣営

 だが「安倍3選」の原動力はそれだけではなさそうだ。もう少し深い理由について考えてみたい。