近年、高齢者に比べて、20代、30代の若年層に自民党支持率が高いことはよく知られている。このことは既に何人かの政治アナリストが指摘しているが、大学で政治思想史を教えている私の経験からも感じる。

 だが若者が極端にナショナリスティック・排外主義的になっているわけではない。現に「在特会」のような過激な排外主義的団体への支持が若者の間で急速に拡大しているわけではないし、天皇家や英霊、神道等に対する関心が強まっているわけでもない。

 若年層の自民党支持の主な要因は恐らく、現政権が世界の変化に無難に対処し、特に経済の面での相対的な安定を保っているように見えることだろう。

 憲法や民主主義の大原則(理想)から多少、逸脱しても、政治は自分たちの生活や利益につながり、効率的に問題を処理してくれればいい、という功利主義的なメンタリティーだ。

 一方で「反安倍陣営」はそこを読み誤っているのではないか。

 例えば、安倍首相とトランプ大統領が親しい関係にある(ように見える)ことは、現状にさほど強い不満がないのでとりあえず現政権を支持している層からすれば、暴走しがちの同大統領が日本に矛先を向けないよう、うまくつきあってくれているだけのことだ。

 反安倍・反安保体制の人からしてみれば、安倍外交によって、アメリカの戦争に巻き込まれる可能性、もしくは、トランプ大統領の気まぐれに振り回されて日本が孤立する可能性が高まっている、それを何とも思わない人が増えているのは、右傾化だということになる。

 では、どうしたらアメリカとうまく付き合えるのか、そこがないと、功利的な社会のメンタリティーには刺さらないのだ。

 日米安保と自衛隊を廃止し、非武装中立を目指すラディカルな平和主義の左派であれば、立場ははっきりしている。
 
 しかし自民党の反主流派や立憲民主党、国民民主党などは、その立場とは一線を画しているものの、ではどのように日米関係を安定させ、安全保障の仕組みを構築したいのか、が人々から見えないのだ。

 このことは自民党支持層の「反安倍」陣営にも言えることだ。「数に頼って立憲主義的な手続きもおろそかにする安倍は危ない。本来の保守は中道だ」というような、“本来の保守”の名による原則論的批判ばかりだと、安倍政権を倒した後どうするつもりなのか分からない。

 功利主義的な観点から現体制を支持する人たちは引いてしまう。どっちが“真の保守”かというのは、彼らにとってどうでもいい問題だからだ。