すっかり悪役が定着した「炭水化物(糖質)」
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 昨今、すっかり悪役が定着した「炭水化物(糖質)」だが、極端に制限しても、死亡リスクが上昇するようだ。

 米国の45~64歳の男女、1万5428人を平均25年間追跡調査した「ARIC(4地域動脈硬化リスク研究)」および日本国内の30歳以上の住民を10年間追跡調査した「NIPPON DATA80」など八つの疫学調査を総合した結果、炭水化物の摂取量と総死亡リスクは「U字形曲線」の関係にあることがわかったのだ。

 つまり、食事に占める炭水化物が多過ぎても少な過ぎても、死亡リスクが上昇するわけ。

 ARICにおいて、追跡期間中に死亡した6283人のデータを解析したところ、1日の総エネルギー摂取量に炭水化物が占める割合が50~55%の死亡リスクが最も低く、40%未満でも、70%以上でも死亡リスクが上昇した。

 具体的には40%未満の平均寿命はおよそ4年短く、70%以上では1年の短縮が認められた。八つの研究を総合した解析結果でも、同様の傾向が示されている。

 ちなみに「日本人の食事摂取基準(2015年版)」では、1日の総摂取エネルギー量に占める炭水化物の割合を50~65%としており、上限値では死亡リスクが上昇する可能性がある。

 さらに死亡リスクが最も低い50~55%のグループの食事内容を分析した結果、炭水化物の代わりに何を食べるかによって死亡リスクが変動することも示された。

 たとえば、炭水化物を鶏肉やチーズを含む動物性の脂質やたんぱく質に置き換えた場合、死亡リスクは18%上昇。逆に、植物性の脂質やたんぱく質──ナッツ類や全粒穀物、野菜類に置き換えた場合は、18%低下した。

 研究者は「低炭水化物食は、長い間に動物性食品の摂取が増える一方で、野菜や果物、全粒穀物が減り、高死亡リスクにつながる」としている。どうやらちまたに流布する「糖質制限なら肉食べ放題!」とはいかないらしい。 

 結局、健康的な食事とは、ほどほどの主食と豆・種実類に野菜、そして魚介類を適度に摂る「一汁二菜」あたりに落ち着きそうだ。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)