「低炭水化物ダイエットは正解か?」
「脳が砂糖をやたら欲しがるのはなぜか?」
「食べた分だけ動けば確実にやせるのか?」
「カロリーを減らせば体重は減るのか?」

これらの「食事の疑問」に答えつつ、「人が太るメカニズム」を医学的に徹底解明したNYタイムズベストセラー『果糖中毒』が9/13に発売された。

アメリカの一流メディカルスクール教授が229の医学論文から「食事の正解」を導き出し、「健康な脳と体」に戻るための処方せんをあざやかに提示したとして、原書はアメリカで12万部を超え、アマゾンレビュー987件、平均4.6と高評価をたたき出した。

最新のWHO統計によると、現在世界で約19億人が「体重過多」、約6億5000万人が「肥満」だという。これは世界中の人々が運動を怠けて、食べ過ぎた結果なのか? 『果糖中毒』では、「肥満は自己責任論」を全面否定し、現在の「肥満の世界的大流行」は糖分、特に「果糖」が主な原因だと結論づけている。

ここで『果糖中毒』の一部を特別に無料で公開する。

この30年で
脂質の量は増えていない!

果糖の摂取量がこの100年で6倍に激増!<br />肥満大流行を起こした物質の正体

 一見すると、私たちは今、あらゆるものを以前より多く食べるようになったように思える。だが本当は、「あらゆるもの」を多く食べているわけではない。

 実際には、以前より多く食べるようになった食品もあれば、食べるのが減った食品もある。そういった食品が何であるかを知れば、肥満の世界的大流行を阻止する鍵が見つかるはずだ。

 米国農務省は、消失する栄養素について記録をとっている。そうしたデータを見ると、肥満の世界的大流行が加速しても、タンパク質と脂質の合計摂取量は比較的一定のままに留まっていることがわかる。

 しかし、1980年代に米国医師会、米国心臓学会、米国農務省がこぞって「低脂肪」食習慣に切り替えるガイドラインを作成したため、総摂取カロリーの割合に脂質が占める割合は低下した(40%から30%に減少)。タンパク質の摂取量は、15%前後と、比較的一定の割合を保っていた。

 しかし、総摂取カロリーが増えたのに、脂質の総摂取量が変わらなかったとすれば、何かほかの栄養素の摂取が増えたはずである。その答えは、炭水化物のデータを調べればわかる。

糖分の主成分「果糖」摂取量が
この30年で6倍に

 実は、総摂取カロリーに占める炭水化物の割合は、40%から55%に増えていたのだ[1]。私たちが摂取する炭水化物は確かに両方のクラスとも(すなわちデンプンも糖分も)増えていたものの、総摂取カロリーにおけるデンプンの総摂取量は、49%から51%に微増しただけだった。

 ところが、果糖の摂取量は8%から12%に増加し、場合によっては(特に子どもたちのあいだでは)、総摂取カロリーの15%にまで達していたのである。

 というわけで、私たちが以前より多く口にしているものは糖分、しかも特に果糖であると考えるのが筋だろう。私たちが口にする果糖の量は、過去30年間に2倍になり、20世紀の100年間では6倍になった。世界的なジレンマを解く鍵は、人々の食生活におけるこの変化を理解することにある。

 燃やされるカロリーはすべて同じ働きをするが、口にするカロリーは同じ働きをするわけではない。そしてここにこそ、肥満の世界的大流行を理解する鍵がある。つまり、私たちが口にする食品の質は、食べる量に影響を与えるのだ。

[1] P. Chanmugam et al., (2003) “Did Fat Intake in the United States Really Decline between 1989-1991 and 1994-1996?” Journal of the American Dietetic Association, 103 (7): 867-72.

(本原稿は書籍『果糖中毒』からの抜粋です。訳者による要約はこちらからご覧になれます)

著者について
ロバート・H・ラスティグ(Robert H. Lustig)
1957年ニューヨーク生まれ。カリフォルニア大学サンフランシスコ校小児科教授。マサチューセッツ工科大学卒業後、コーネル大学医学部で医学士号を取得。2013年にはカリフォルニア大学ヘイスティングス・ロースクールで法律学修士号(MSL)も取得。小児内分泌学会肥満対策委員会議長や内分泌学会肥満対策委員会委員などを歴任。「果糖はアルコールに匹敵する毒性がある」と指摘した講義のYouTube動画「Sugar: The Bitter Truth(砂糖の苦い真実)」は777万回以上視聴されるほど大きな話題になった。
中里京子(なかざと・きょうこ、訳者)
翻訳家。訳書に『依存症ビジネス』(ダイヤモンド社)、『ハチはなぜ大量死したのか』(文藝春秋)、『不死細胞ヒーラ』(講談社)、『ファルマゲドン』(みすず書房)、『チャップリン自伝』(新潮社)ほか。