相手の行動を変えたいのなら
強要よりも「実体験」がカギである

 この会社の例は極端な例と思うかもしれないが、営業部門と管理部門が対立している企業は実に多い。締め切りを守らない営業部門と、命令メールを送り付ける管理部門。どちらも自分たちの言い分を主張し続けた結果、次第にヒートアップして、対立が激化するという典型例だ。

 管理部門のAさんは、うるさいことは言いたくはないと思いながら、自分たちの業務が進まないし、そもそも締め切りを守らないと結局は営業担当者が困るのだから、親切心からやっていると思うようにして、締め切りを強調し始めたという。しかし、それが営業部門にストレスを与えてしまったわけだ。

 社内で締め切りを強調するうちに、知らず知らずのうちにそれが高じて、あまり意識せずに、社外の人にもそうしたメールを出すようになっていった。最初は抵抗感を持ちながら送っていたメールでも、日々の習慣になってしまえば、いつの間にか抵抗感はなくなっていき、当然のことになってしまうのだ。

 Aさんから、「いったいどうすればよかったのでしょうか」という質問をいただいた。

「アクションが必要なメールならそのように明記してくれ」「営業は忙しい。タイトルで重要度がわかるようにしてくれ」――このように営業担当者から言われた時に、それを真に受けて行動するのは、実は得策ではない。にっこり笑って、「〇〇さんはそんなガイドをしなくても次回は締め切りを守ってくださるでしょうから、よろしくお願いしますね」とだけ言い、締め切りに間に合わなければ、経理処理を次月に回すなど、割り切る方法もあるのではないだろうか。

 今回のAさんのアクションは、良かれと思って、細かく管理したり、管理を徹底したりするという行動が、問題解決にならないばかりか、営業部門との対立を激化させるという弊害を生んだ。うるさく管理したところで状況が改善されない上に、いらぬ対立も生むのなら、うるさく言わない方がマシではないか。

 締め切りを守れと100回言うことよりも、締め切りを守ると利益があり、逆に締め切りを守らないと実害があるということを実体験してもらうことの方が、相手の行動を変えるためには効果的なのだ。細かく管理したり、管理を徹底したりすることは、人を育てない。