他店の蕎麦職人も食べに来る本当に美味い店。切れ味のいい粗挽きせいろと逸品の肴を囲みながら亭主の人柄に触れる。町蕎麦の和やかな風情と手打ち蕎麦屋の凛とした空気感が一体となった雰囲気は、居心地がよくつい昼間からでも飲みたくなってしまう。
町蕎麦の人情と手打ちの凛とした空気感
一人客、仲間連れ、カップルで賑わう
代田橋駅の北口から甲州街道に向かってゆっくり歩く。歩道橋で向かい側に渡ると、目当ての「まるやま」の看板がすぐに見える。駅からはほんの数分の距離だ。
元は「長寿庵」の屋号で商いをしていたが、今ではすっかり手打ち蕎麦屋の造作の門構えに変わっている。
店内に入ると、御簾で仕切られたテーブル席が並ぶ。昼から蕎麦屋酒がやれる雰囲気が、蕎麦前好きには堪らない。入り口の大きなテーブルはカウンター席のような使い方になっていて、1人でも気軽に訪問できるのがまた嬉しい。
客は熟年カップルも若いカップルも多いという。近所の馴染み客もいる。平日が休みの蕎麦屋の亭主たちや蕎麦職人も「まるやま」には行きやすいという。それは「まるやま」の蕎麦に魅力も感じてのこともあるが、それ以上に、同業者ながら、亭主の人柄を好んでいるのかもしれない。厨房から一見客にも気軽に声を掛けるし、屈託のない楽しい人なのである。
店は町蕎麦だった頃の和やかな風情と、手打ち蕎麦屋の凛とした空気感が渾然一体となっている。それがこの店独特の雰囲気を作っていて、手打ち蕎麦屋の敷居の高さを取り払っている。そんな雰囲気を作ってきたのは「まるやま」の店の生い立ちにある。