2016年度、白物家電でここ30年間での国内最高シェアを記録したパナソニック。同業が軒並み家電から手を引く中、生き残った「白物家電のラストマン」。その戦略に死角はないのか。(2017年7月1日号 週刊ダイヤモンド 「白物家電の逆襲」特集より抜粋)

 「何だかんだ言って、結局パナソニックでそろえちゃったね。ポイント制度があったら結構たまったかも」

 6月初め、東京都内の家電量販店。引っ越しで白物家電を一通り買い替えることになった30代の夫婦は苦笑いした。電子レンジに洗濯機にエアコンにドライヤー。買った家電はほとんどがパナソニック製だったのだ。

 設立100年を来年に控えた今年、パナソニックは白物家電で歴史的な快挙を成し遂げた。最近30年で最高となる27.6%のシェア(金額ベース)と、ほぼ初めてとなるセグメント営業利益1000億円超えを達成したのだ。

 白物家電事業は、パナソニックの2016年度連結営業利益の33%を稼ぎ出す。パナソニックの経営を支える2本柱のうちの一つだ。

 一方、同社の競合に当たる総合家電メーカーは、事業撤退と再編の渦の中で軒並み白物家電事業を切り離してきた。

 日立製作所は02年に白物家電事業を分社化。三菱電機はエアコンなど空調機器を中心に事業を絞り込んだ。三洋電機は12年に白物家電事業を中国・ハイアールに売却。そして16年にはシャープが台湾・鴻海精密工業傘下に入り、東芝の家電事業が中国・美的集団に売られた。大型家電から調理・美理容家電までフルラインアップを本体で手掛けているのは、日本企業ではパナソニックのみだ。

 「白物家電は1大陸に1社ずつが独占している状況で、日本も同様になった」(本間哲朗・パナソニックアプライアンス社社長)