完全に裏をかかれた捜査網

 実は、大阪府警は逃走から約1ヵ月半、一貫して府内に潜伏しているとの見立てで捜索を継続していた。

 というのは、捜査関係者によると、樋田容疑者は高校時代にグレて不良グループに所属していたが、本来は「ひ弱な根性なし」。当然、山中などに潜んでサバイバルできる生命力や精神力はないとみて、実家や知人宅を中心に24時間態勢で張り込んでいたほか、府内の空き家などを調べていたという。

 加えて「誰かと一緒に行動していないと不安になるタイプ」(捜査関係者)で、遠くへ単独で逃亡している可能性は薄いと踏んでいた。しかし、まさか相棒を作って寂しさを紛らわせ、その上で2人旅の偽装に利用していたとは「想像もしなかった」(同)と肩を落とした。

 結局、利用された“相棒”の自転車も、和歌山県内で放置された盗難自転車だったことが判明し、逮捕される憂き目に。樋田容疑者は「先輩」と呼んで慕っていたというが、男は「勝手についてきて、うっとうしかった」と話しているという。

 逮捕時、樋田容疑者は280円しか現金を所持していなかったが、大量の生活必需品を自転車に積んでおり、府警はこれらを盗みながら逃走していたとみている。樋田容疑者が黙秘しているため、加重逃亡容疑の裏付け捜査で「先輩」から逃走経路などを聴取しているが、とばっちりでいい迷惑に違いない。

 テレビの全国ニュースやネットで繰り返し取り上げられていた逃走劇。

 それでも誰一人気付かれることなく、樋田容疑者は悠々とサイクリングを楽しんでいた。逃走後は大阪府内で繰り返したひったくり以外、大きな事件を起こしていなかったが、凶悪な性犯罪などで起訴されている被告だ。推定無罪の原則はあるので「性犯罪者」とは断定できないが、人気のない場所で再び女性が襲われていた危険性もあったのだ。

 現在、警察庁指定重要指名手配11人を含め、指名手配や公開捜査されている容疑者のほとんどは死亡したか、市中を彷徨(さまよ)っているとされる。今回、樋田容疑者と接触した人たちは一様に「こんな身近な場所にいたなんて」と驚いていた。

 意外に重要手配犯ら容疑者も「潜伏」ではなく、日常に紛れて堂々と普通の生活を送っているのかもしれない。

訂正
記事初出時、「数日後、明石海峡大橋を渡って淡路島に移動し」とありましたが、実際の逃走ルートは不明だったため、削除させていただきました(2018年10月10日 15:30)