草間弥生
写真:ユニフォトプレス

 美術商で組織する東京美術倶楽部(東美)の苦境が思わぬかたちで露わになった。

 東美は美術商の互助組織に端を発する組織。100年以上にわたり、日本における美術市場の相場をリードし、「人気作家の作品の価格に絶大な影響力を誇ってきた」(美術ジャーナリストの藤田一人氏)。現在は株式会社となっており、展覧会やイベント開催の他、会員の美術商による美術品の真贋鑑定を主な業務とする。

 10月4日、東美は鑑定業務を一般財団法人「東美鑑定評価機構」に移管したことを発表した。

 記者会見では、民間の一法人ではなく、公益性ある団体が鑑定業務を行うことで、美術品の値付けの信頼性を高め、日本の美術市場の活性化ひいては国の文化経済戦略に貢献すると意義を強調した。

 しかし、会見が進むにつれ、貢献というよりも、東美が国の打ち出す「文化経済戦略」の恩恵をなんとか享受したい、という本音が徐々に露わとなった。

「文化経済戦略」とは政府が掲げる成長戦略の一つで、既存の文化ストックを産業として活用し、創出された価値を新たな創作活動の原資とすることを目指すもの。GDPや富裕層数の割に諸外国に比べて規模が小さいとされる美術市場の活性化に対するアプローチが議論されており、その動きを千載一遇のチャンスと色めきだつ美術関連団体は少なくない。

 より具体的な公益性の意義について記者から質問が飛ぶと、「我々美術商も苦しい」と東美鑑定評価機構の浅木正勝代表理事は思わぬ本音を口にした。

 そして、一般財団法人化の主な目的は「国に美術品税制の改正の提言をするため」と説明。営利目的の法人ではなく、公益性ある団体となることで、国に対して意見しやすくなるという。