今年7月に発売されるや30万部のベストセラーとなった書籍『わけあって絶滅しました。』。子どもだけでなく大人からも支持されているのは、誰もが絶滅という出来事から何かを学ぼうとしているからかもしれない。前回は、監修者の今泉忠明先生に、本書の教育的意義を伺ったが、第二回では、地球上の生物に関する根源的な話を伺った。果たして絶滅とは?進化とは?

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人間も一度くらい真剣に「絶滅」について考えた方がいい

いま、子どもが一番会いたい動物学者が語る「絶滅」や「進化」について真剣に考えることの大切さ

――なぜ「絶滅」ということが起こるのでしょう?

今泉先生:命あるものはすべて環境に適応して生きています。雨、温度、空気……。そして、よく適応しているものほど滅ぶのも早いのです。恐竜が良い例ですね。

――ひとくちに絶滅といっても、いろいろなエピソードがあるようですが、大体どれくらいの時間をかけて完全に滅んでしまうものなのですか?

今泉先生:絶滅した「理由」によります。恐竜は1週間で滅んだとも言われていますし、長いものでは100万年かけて滅びます。たとえば、酸素が薄くなるなど呼吸系の変化に適応できなかった場合は早く、食べ物が原因の場合は比較的長い年月がかかります。

 もちろん人間も例外ではありません。実は1910年に、「地球上から5分間だけ空気がなくなる日がくる」という噂が流れたことがあるんです。そこで皆、自転車のゴムホースを買ったり、洗面器に水を張って顔をつけ息を止める練習をしたりした。面白いでしょう? 

 でも、この時代の人たちを笑ってはいられません。もしも本当に酸素がなくなれば、私たちの命はあっという間に尽きてしまうんですから。私は子どもの頃、絶滅についた学んだとき、「酸素がなくなったらどうしよう」と眠れなくなるくらい心配になったものです。

 絶滅を他人事として片づけるのではなく、一回ぐらい自分たちの弱さについて考えてみるのも良いことなのではないでしょうか。

「強い者」が生き残るとは限らない

――では反対に、進化とはどういうものなのでしょう?

今泉先生:本書では“絶滅しそうで、していない”生き物も紹介しているのですが、生き残りを左右するのは「運」。それだけです。

 恐竜がいい例でしょう。彼らは当時の環境に合わせた進化をとげ、大きく強くなっていきましたが、その代償で体温を調節する機能が弱く、体温を保つためにたくさんのエサを食べないといけませんでした。そのため、環境が変わり寒くなると、食糧不足を乗り越えられず滅びていったのです。強くても滅びる。環境が変わったのは不運としか言いようがありません。

 人間が絶滅の危機に瀕したときは、どうなるでしょうね。人間ほど知恵をつけた生き物はいまだかつていませんから。地球が太陽に近づいて熱くなったときは対処しようがありませんが、寒さだったら乗り越えられるかもしれません……。