小学校5年生の時に衝撃を受けた、ある「映画」とは?
――そもそも先生はなぜ生き物に興味を持たれるようになったのでしょうか?
今泉先生:父が動物学者で、子どもの頃から調査を手伝っていたのもありますが、一番のきっかけは、海洋学者のクストーが作った映画『沈黙の世界』を見たことです。クストーは、「アクアラング」という潜水用の呼吸装置を発明した人。私が興味を持ったのは、松明を持ったダイバーが、水中に潜っていくワンシーンです。その神秘的なオレンジの光に魅せられると同時に、「どうして水中で松明が燃えるんだろう?」と興味が湧きました。さっそく調べてみたところ、マグネシウムは水と反応して燃えることが分かったのです。
当時私は小学5年生でしたが、この時期に受けた刺激は、大きな興味として残るんですね。本を読む力もあるから、疑問を調べて知識を深めることもできる。
最近子ども向けの本を多く手掛けているのも、この時期の子どもたちにたくさんの「刺激」を提供したいからです。
今泉先生が選ぶ『わけあって絶滅しました。』ベスト3!
――ではそんな研究少年だった先生が、この本からぜひ読んでもらいたい生き物ベスト3を教えてもらえますか?
今泉先生:絶滅理由別に挙げましょう。
1つ目は、「人間の乱獲」によって絶滅したリョコウバト。
これは前回のインタビューでもお話ししましたが、塩漬けにしたリョコウバトを運んだ伝票が残っていて、本書の中で唯一絶滅理由がハッキリしている生き物です。多いときは50億羽もいたとされていますが、それほど数の多い生き物でさえ、乱獲によって絶滅してしまうこともあるのですね。
2つ目は、「環境の変化」に適応できず滅びたギガントピテクス。
身長が3メートルもあったとされていますが、草食動物なんですよ。森が減って食べ物が減ったときに、パンダとの食糧争いに負けて絶滅してしまったようです。絶滅した巨大生物はたくさんいて、ウォンバットのご先祖様のディプロトドンは今の何倍も大きかった。現存する生物の中で一番大きいシロナガスクジラも、かつて34メートルのものがいたという記録がありますが、今ではそこまで大きいものはいません。何でも大きすぎるものは、簡単に滅びてしまうのですね。
3つ目は、「絶滅しそうでしなかった」生き物の中から、ムカシトカゲ。
ムシトカゲは恐竜の時代からいた生き物で、たまたま人間や他の動物が入ってこない無人島にいたため生き延びた。小食で100年以上の寿命があることから、敵さえいなければひっそりと長生きすることができたのでしょう。
ちなみに、かつて手塚治虫の『三つ目がとおる』という漫画が一世を風靡しましたが、ムシトカゲも額に三つ目の目があり、ここで明かりをキャッチして体内時計を整えているのです。じつは人間も、目こそないものの、額の辺りにある「松果体」という脳の部分が、やはり光をキャッチしてメラトニンという睡眠ホルモンを出していると言われています。