――ほかにも本書には、その適応のために、ものすごく首が長くなった恐竜や角が大きくなった鹿など、ビジュアルも面白い生き物がたくさん登場します。「絶滅」というテーマでありながら、楽しく読める点が新しいと思います。

今泉先生:絶滅した生物は、化石も一部しか見つかってないものが多いですから、想像を膨らませて描けるのが面白いところです。ただ、人間が滅ぼした絶滅生物のことを知ると「人間がいないほうがいいのかな」と暗い気持ちになる人がいるかもしれません。でも、この本にはあえて教訓めいたことは入れませんでした。落ち込んで考えるのをやめるのではなく、楽しく読み進めながら、「生物っておもしろいな」と気付いてもらったり、気になった生物について、自分なりに調べたり考えたりしてもらえたら嬉しいです。

――そんななか、あえて本書から得られる「教訓」を語るとしたら?

今泉先生:人間の進化のピークは、火や車輪の発明をした頃までだったと私は思っています。それ以降は、自分たちが環境に合わせるのではなく、周囲の環境を自分たちに合わせることで発展してきた。その結果、数々の生き物の生態系を脅かすようになっていきました。絶滅した生き物たちは、「そろそろ大人しくしなさいよ」ということを、同じ目線で語りかけてくれるような気もするのです。

――今泉先生、このたびは貴重なお話をありがとうございました!

いま、子どもが一番会いたい動物学者が語る「絶滅」や「進化」について真剣に考えることの大切さ
今泉忠明(いまいずみ・ただあき)
動物学者
東京水産大学(現東京海洋大学)卒業。国立科学博物館で哺乳類の分類学・生態学を学ぶ。文部省(現文部科学省)の国際生物学事業計画(IBP)調査、環境庁(現環境省)のイリオモテヤマネコの生態調査等に参加する。上野動物園の動物解説員を経て、東京動物園協会評議員。おもな著書に『野生ネコの百科』(データハウス)、『動物行動学入門』(ナツメ社)、『猫はふしぎ』(イースト・プレス)等。監修に『ざんねんないきもの事典』シリーズ(高橋書店)等。単独性でひっそり暮らし、厳しい子育てをする、チーターやヒョウ等のネコ科の動物が好き。