タキ著(河出書房新社/1986年)(別の版元より文庫化/2005年)
祖父はギリシャの元首相、父は海運王という名門の出の著者が、上流社会の人々の行動様式について考察したコラム集。世界中のセレブリティーと直接的な交流があっただけに、その洞察にはキレとコクがある。
著者の関心は「スタイルとは何か」の一点にある。ある人にはある。ない人にはない。捉えどころのない資質だが、人間の最も統合的な価値はその人のスタイルに表れる。スタイルとは、見せ掛けの反対にある強い信念である。富と名誉に溢れたセレブには、本当のスタイルを持ち合わせた人はほとんどいない。スタイルは決してカネでは買えない。シニカルな筆致で逆説的に人間の本当の価値を抉り出す。タキのスタイルは、イヤラシイほどカッコイイ。
(一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授 楠木 建)