視野を広げるきっかけとなる書籍をビジネスパーソン向けに厳選し、ダイジェストにして配信する「SERENDIP(セレンディップ)」。この連載では、経営層・管理層の新たな発想のきっかけになる書籍を、SERENDIP編集部のシニア・エディターである浅羽登志也氏がベンチャー起業やその後の経営者としての経験などからレビューします。
自分にしかできない、やらなければならない
そんな仕事が成長を実感させる
読者諸兄にとって、これまでのキャリアで一番楽しかった時期はいつだろうか。
私なら、新卒で入った会社を退職し、日本初のインターネットプロバイダー立ち上げに参画した数年間と答える。
設立したばかりのスタートアップで資金が限られており、満足のいく給料などとてももらえなかった。それでも毎日終電まで働き、土日も家で仕事をした。連日かなりのハードワークを続けなければならなかったのだ。
だが、不思議と苦しくはなかった。むしろやりがいがあり、この上なく充実した毎日だった。
私を含む社内の数人のエンジニアは、分担しておのおのができることをやっていた。それぞれ自分の能力をフルに発揮しつつ、自由であると同時に責任を持って仕事を進めていたのだ。
そのころの会社には自分にしかできない仕事があり、自分がやらなければならないという使命感があった。時に失敗しながらも、がむしゃらに取り組んだ。
それによって自分も会社も大きく成長できたのだ。
人が働く喜びを感じるのは、決してお金や名声を得た時ではない。全力を尽くして取り組み、困難を乗り越えながらも一定の成果を上げ、自らの成長を実感できた時ではないか。
そういう働き方ができるのは、小さなスタートアップならでは、と思うかもしれない。だが、巨大企業になっても同様の社内カルチャーを保持している会社がある。ネットフリックスという会社だ。