糖尿病の95%は生活習慣の乱れや肥満が原因。しかし、およそ5%の患者は、自分の免疫細胞に血糖をコントロールする「インスリン」を分泌する膵臓のβ細胞が破壊される自己免疫疾患の「1型糖尿病(1DM)」だ。そのほか、まれにウイルス感染や遺伝子異常に関連する1DMもある。
また、1DMは幼児~児童、生徒の病気と誤解されているが、実際には成人以降の発症が半数近くを占める。
たとえば、英国のテリーザ・メイ首相が2012年、56歳で1型糖尿病と診断されたのは有名な話。内務相を担当していた当時のげき痩せぶりに「職務のストレスかな? 心配だなあ」と労働党の某政治家が嫌みたっぷりにツイートしたところ、「体重が落ちたのは1型糖尿病にかかったからだけど、別に職務遂行能力には影響しない」と一蹴してみせた。
これには政敵(彼は2型糖尿病だった!)も素直に脱帽。今やメイ氏は、知られる限り世界初の1DMの首相である。
β細胞が壊れ、絶対的なインスリン欠乏に陥る1DM治療の基本は、1日4回以上のインスリン注射だ。近年は、自己注射からの解放を目指し、自動インスリン注入装置の利用や、腹膜への膵臓細胞の移植などが試みられている。
メイ首相のように百戦錬磨の女性ならまだしも、思春期~若年層の患者は人前での自己注射に抵抗を感じ、屈辱感を抱きやすい。
先日カナダから報告された調査結果では、14~24歳(平均年齢19.1歳、男性3割)の回答者のうち65.5%が劣等感や恥ずかしさを抱えているとした。
さらに、こうした負の感情を持っていると、血糖コントロール不良になる確率が2.25倍に上昇するほか、致命的な結果を招く重症の低血糖の発症率がおよそ3倍に増えることもわかっている。
適切な血糖コントロールを支えるのは周囲の理解と協力だ。1型、2型を問わず、糖尿病であることを安心してオープンにできる環境には何が必要か、この日を機に考えていきたい。
(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)