遺産相続に関連し、「鈴木社長がグループ有力会社株の譲渡契約書を死後に捏造し、本来遺産だった株約69万株を1株1円で不正に入手した」と、元取締役が17年末になって内部告発。告発を主な根拠として、千壽氏は今年5月末、鈴木社長らを相手取って提訴した。2代目社長の死後に両者は遺産相続をめぐって裁判をしており、05年に和解。今回が係争第2ラウンドというわけだ。

現経営体制が揺らぎかねない
リスクこそがポイント

 今回の千壽氏の訴えは、「不正に渡った株は本来遺産相続の対象」との確認を求めるもので、当時の有力会社(非上場)株約69万株がその後の上場を経て、現在のポーラ・オルビスHD株で約4191万株(11月9日終値で時価総額約1300億円)になったと計算。勝訴すれば、当時の法定相続分(4分の3)のHD株(同約980億円)を千壽氏が手にすることになる。

 金額の高さも桁外れだが、ポーラ・オルビスHD第2位の大株主である鈴木社長の株の多くが反社長派の手に渡り、現経営体制が揺らぎかねないリスクこそがポイントだ。

 ポーラ・オルビスHDの株価は、本裁判が始まった今年8月上旬以降、約2割下がっている。この間に訪日客数の伸びの鈍化などがあったにせよ、「裁判リスクも株価低迷の一要因」とみる株式市場関係者は少なくない。

 千壽氏側は当初、「地裁判決は来年3月までに出る」と見通しを示していた。だが、本案審理入りまでに予想以上の時間がかかったため、「判決は来年夏ごろになりそう」と見方を変えている。

 ポーラ・オルビスHDの定時株主総会は例年3月末。まだ地裁判決は出ていない公算が大きいが、それでも株主は鈴木社長に対し、裁判リスクに関する厳しい質問を投げかけるだろう。

 鈴木社長は、今年3月の定時株主総会で告発の件を質問され、「警察に相談している。今後司法の判断で決着するもの」と株主に説明していた。というのも鈴木社長は17年末の取締役会で、「事実無根の告発で脅され、退任を迫られている」「恐喝または強要罪」と話しており、定時株主総会での発言は刑事事件として元取締役が起訴されることを念頭に置いたものだったとみられる。

 だが現実として、元取締役が何らかの罪で起訴された事実は本稿執筆時点ではない。

 このままいけば、鈴木社長自身が訴えられた巨額遺産裁判(民事)の「司法の判断」が先にやってくることになりそうだ。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 土本匡孝)