優勝した川崎フロンターレ優勝セレモニーで100万円のクリスタル風呂桶を見せびらかす中村憲剛  写真:日刊スポーツ/アフロ

不思議に感じた人も多かったのではないだろうか。史上5チーム目となるJ1連覇を達成した川崎フロンターレのレジェンド、MF中村憲剛(38)が優勝セレモニーの中で、光り輝くクリスタル・ガラス製の特製風呂桶を笑顔で掲げていた光景に対してだ。なぜ風呂桶だったのか。どんな意味が込められているのか。クラブが長く悲願としてきた初タイトルを獲得した昨シーズンには、実は事前に用意されていたヒノキ製の風呂桶を選手たちが掲げている。風呂桶にまつわる背景を探っていくと、2005シーズンからJ1の舞台に定着し、ピッチの内外で地域の老若男女からこよなく愛され、リーグを代表する強豪へと進化を遂げてきたフロンターレが積み重ねてきた、地道な努力の跡が見えてくる。(ノンフィクションライター 藤江直人)

優勝セレモニーの「風呂桶」の謎
今年はヒノキ製からスワロフスキー社製に

 今シーズンも風呂桶が用意されていた。しかも、ヒノキ製からクリスタル・ガラスが散りばめられたスワロフスキー社製にバージョンアップしていたところが、いかにも川崎フロンターレらしい。

「はい、憲剛さんはこれを持ってください」

 史上5チーム目となるJ1連覇を達成した今月10日。敵地ヤンマースタジアム長居のピッチの中央に設けられた特設ステージへ集まってきた選手たちが、Jリーグの村井満チェアマンから贈られた銀製の優勝シャーレを、歓声とともに日が暮れかかり始めた空へ掲げようとした直前だった。

 フロンターレひと筋でプレーすること16年目の38歳。J2を戦っていた2000年代の前半を含めて、クラブの歴史に刻まれてきた喜怒哀楽のほとんどを知るレジェンドのMF中村憲剛は、スタッフから手渡された100万円相当の特製豪華風呂桶に苦笑いを隠せなかった。