等々力陸上競技場の周辺にもさまざまな飲食ブースや子どもたちが遊べるアトラクションが、年間を通じて登場するようになって久しい。Jリーグが実施するスタジアム観戦者調査で、フロンターレが地域貢献度1位の評価を獲得してきたのは必然でもあった。

 地域に熱意と本気度を、ただ単に伝えるだけではない。中村が言及したように、クラブとファン・サポーターを含めた市民を、すべてにおいて物事を楽しむマインドが結びつけている。さらに付け加えれば、エンターテイメントの要素に富んだ社員からの企画を、積極的に取り入れてきたクラブの歴史がある。

「あの風呂桶もそうなんです。来ていただける皆さんに楽しいと思っていただくためには、まずは我々が楽しくやらなかったらダメだと思うので。仕事は遊びじゃないですけど、それでも我々自身が楽しいと思えるようなことを考えなきゃいけないと思っています」

 笑顔を浮かべながら、藁科社長はこう語ったこともある。そして、フロンターレが徹底しているのは、イベントやキャンペーンの成功に決して満足しないことだ。定着した『いっしょにおフロんた~れ』や『算数ドリル』も、必ずと言っていいほど前年からバージョンアップさせて展開してきた。

 ヒノキ製から100万円相当のクリスタル・ガラス製へと昇華し、中村をして「さすがに仕込むね」と言わしめた風呂桶も然り。今現在よりも前へ、前へと進んでいこうとする、クラブ全体にみなぎる強い意思が込められていると、中村は感じずにはいられなかった。

「去年と同じではなくて、ピッチの内外でいろいろなことを先へ進めていかなければいけない、という考え方はすごく大事だと思う。その意味では僕たち選手が来年以降もやるべきことはただひとつ、今やっていることの質を高めていくことだけだと思っています。もちろん相手も対策を講じてくるだろうし、連覇をしたチームがターゲットにされるわけですから、今年とは比べものにならないプレッシャーがかかってくると思いますけど、それらを跳ね返せるだけのパワーが今のチームにはあると思っているので」

 中村をはじめとする選手たちは、2007-09シーズンのアントラーズだけが達成しているリーグ3連覇の偉業へ。そして、クラブは川崎市の象徴となった現状に満足せず、地域との絆をさらに強く、なおかつ深めていくための施策へ。かつて例えられた車の両輪はさらに回転数を上げて、遅れてJリーグへ参戦したフロンターレを、ピッチの内外で常勝軍団へと進化させるチャレンジを加速させていく。