私のつたない英語力に、Aは辛抱強く付き合ってくれた。彼とは実にいろいろな話をしたが、「マレーシアでは男性同士が友情の証として手をつなぐ」と聞いたときは、日本文化との違いに驚いた。

 私は、同性同士で手をつなぐことの“友情見せつけ要素”を疑っている。しかし私がそのあたりを突っ込むと、「特にそんなこともない」そうである。

 どこかに出かけて一緒に歩いているときに手をつなぐことがあるそうで、無理やり日本のカルチャーにこじつけるなら、男性同士で肩を組んで歩くような感覚に近いのかもしれない。

 手をつなぐことへの認識は日本とマレーシアで大きく異なるようである。

 ムスリムの女性は異性との交際にさまざまな制限があるが、その中の1つに「夫以外の異性と触れ合ってはいけない」というものがある。これには「手をつなぐ」はもちろん、「挨拶としての握手」も含まれている。

 ムスリムには、異性間の交際・交流にそもそも「手をつなぐ」という選択肢がないので、異性間で行われる特別なものと認識されておらず、結果として、男性同士の友情の証として手をつなぐことが違和感なく受け入れられているのかもしれない。

 マレーシアで人口が最も多い宗教はイスラム教なので、国民全体にこうした認識がうっすら根づいている背景も考えられる。

 もっともムスリムであっても、どれだけ厳格に戒律を守っているかは個人差がある。ヒジャブという、われわれ日本人にとってもイメージしやすい、ムスリムの代名詞ともいえる女性が頭に巻く布があるが、ヒジャブを巻かないで外出するムスリムもマレーシアでは珍しくはない。もちろん巻いている女性も珍しくはない。

 非常にフレキシブルなのである。

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