21世紀の自動車産業をけん引したカリスマ経営者は、あっけない退場を迎えた。有価証券報告書の虚偽記載など3つの不正の疑いをかけられて、カルロス・ゴーン氏が失脚したのだ。ゴーン氏を刺した日産経営陣は、次の一手に向けて動き始めている。(『週刊ダイヤモンド』編集部 浅島亮子)
CFOの交代が
ゴーン逮捕劇の起点
社長に引き上げてくれた恩人の首を差し出す心中は、いかばかりか。
11月19日、20年近くにわたって仏ルノー・日産自動車グループに君臨したカルロス・ゴーン氏が羽田空港に着陸するや否や、有価証券報告書の虚偽記載等の疑いで東京地検特捜部に逮捕された。
同日の緊急会見で、西川廣人・日産社長兼最高経営責任者(CEO)は「数ヵ月の内部調査を経て、容認できない重大な不正があり解任を決断した」と説明している。
すでに、異変は起きていた。5月18日に突如として、最高財務責任者(CFO)をジョセフ・ピーター氏から軽部博氏へ交代したのだ。ある日産幹部は、「ピーターの首を切ったのはゴーンさんだが、軽部さんがCFOに就いたことで内部調査を進めやすくなった」と言う。有報の虚偽記載は財務部門の関与なくして不可能であり、この幹部人事がゴーン逮捕劇の起点になったとみられている。