今年3月には、HomeXの開発者向けの検証センサーキット、HomeXゼロを社内に100台配布した(写真)。ゼロの構想から生産・配布までに要した時間はわずか3カ月。既存製品のリニューアルですら企画から量産開始まで1年以上かかるパナソニックでは、考えられなかった話だ。

 開発の中心になったのは、31歳のリードエンジニアの藤原菜々美さん。入社以来研究開発担当で、最終製品を作ったことはなかったが、エンジニア、研究者、法務、品質管理などの混成メンバー約10人と共に一気に作り上げた。日本の本社とのあつれきもあったが、最終的には本社側も、「3カ月でモノを作るために、通常であれば通過しなければならない手続きや申請を、いい意味で擦り抜ける方法を考えるなど、味方に付いてくれた」と藤原さんは言う。

 「素晴らしい」。6月中旬にβを訪れた津賀一宏社長も、既存のパナソニックと全く違うβを確認して感嘆の声を上げていたという。

 βは単なる若手の研修場ではない。「これまでの“タテ”のパナソニックの組織には存在しなかった“ヨコ”の取り組みを広げ、もう一度世界一になる」(βの責任者であるビジネスイノベーション本部の馬場渉副本部長)ことを狙う、次の100年のための戦略組織だ。

 βへの赴任経験者は累積100人を超え、4月には米国支社傘下の組織として正式に組織化された。帰国した後も、「卒業生」同士で連絡を取り合い、新たなプロジェクトを立ち上げる例も出ている。

陳腐化した組織はもう限界に
旧パナとの決別