経産省内でも、ルノーの事実上の支配下にある日産が、三菱自動車を傘下に置いているので、ルノーが、日本メーカーの日産と三菱を支配下に置くのは好ましくないと考える官僚もいた。

 だから、経産省も日産がOBを受け入れるのは、歓迎だっただろう。

 日産が経産OBを受け入れた今年の6月は、ちょうどゴーン氏の社内調査が着手された時期と重なる。このタイミングは微妙なところだ。

ルノーの対中協力で
米政府、技術流出を警戒

 さらに筆者が影を落としていると考えるのは アメリカ政府の意向だ。

 米トランプ政権と仏マクロン政権はうまくいっていない。米トランプ政権は、対中貿易戦争の真っ只中だ。

 もっとも対中貿易戦争を仕掛けたトランプ政権の狙いは、、貿易不均衡は建前であり、実際は中国への技術流出防止というのが本音だ。

 そこに、ルノーの対中技術協力の話が進行中だった。

 ルノーの傘下には、日産と三菱自動車がいる。日本の電気自動車でのエネルギー関連の技術は軍事転用可能なので、アメリカも神経質になっている。

 9月26日に行われた日米首脳会談では、中国こそ名指しはしないものの、「知的財産の収奪、強制的技術移転」に対処すると、共同声明に書かれている(https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000402972.pdf)。

 日本としても、ルノー経由での中国への技術流出を避ける必要があったはずだ。

 こうした複合的な背景が、今回のゴーン事件の背後にあると筆者はにらんでいる。

 といっても、これらはあくまで背景であり、検察の捜査は、ゴーン氏の有価証券報告書の虚偽記載を中心にして、法の正義による一定の司法手続きが進行していくだけだ。

 そのことでは表向き、日仏両政府は静観せざるを得ない。

(嘉悦大学教授 高橋洋一)