当然、専門領域への理解は深まらず、「仕事力」は一向に上がらない。総勢10人の部下の半数は、20代から30代前半の若手。彼らの仕事への向き合い方が変わらない限り、部署全体の業績アップなど到底望めない。受け身であることが“体質化”してしまっているかのような部下をいかに変えるか。辻は悩んだ末、ある決断を下した。

そのとき
リーダーはどうしたのか

 今年7月、辻は入社2年目の若手社員で技術者のA君(24歳)を呼び出し、ある仕事を任せた。彼も指示待ちの典型のような若手だった。

三井E&Sマシナリー(旧三井造船)大分工場の海外生産推進室の責任者となった辻省悟室長
部下を単身でベトナムに派遣した、三井E&Sマシナリー大分工場海外生産推進室の辻省悟室長

「ベトナムで問題発生だ。納期が遅れに遅れている。現地で何かが起こっているのは間違いないが、それが何なのかが分からない。すぐに現地に飛んで原因を見つけ、何とかしてこい」

 当時、海外生産推進室では、ベトナムの外注会社に製造を依頼していた大型運搬機(コンテナクレーン)の関連製品が一向に出来上がってこないという問題を抱えていた。そのまま放置していれば、損害はどんどん大きくなっていく。電話やメールで問い合わせても、要領を得ない答えが返ってくるばかり。業を煮やした辻が白羽の矢を立てたのが、経験が皆無に近いA君だった。

 いきなり海外の製造トラブルを解決してこいとけしかけられた彼は、そのときどう思ったのか。A君自身に尋ねると、「正直、無茶ぶりだと思いましたね。勘弁してくださいよって感じでした」と打ち明け、こう続けた。「まだ2年目。経験も実績も皆無です。しかも僕、英語が苦手なんですよ。どうやって先方とコミュニケーションを取ればいいのか。何から手をつけたらいいのか、何もわからない状態で、不安しかありませんでしたね」。

 辻から具体的な指示やアドバイスはなかったのか。

「何もなかったです。とりあえず現地に行って、何とかしてこいの一言だけでした」