首都ワシントン界隈では、米国とサウジアラビアの協力関係を再構築しようとするトランプ政権の努力は評判が良くない。民主、共和両党の政治家らは以前から、サウジの人権をめぐる歴史を理由に同盟関係の格下げを求めてきた。サウジ国籍のジャマル・カショギ氏が10月にトルコで殺害された事件を受け、連邦議会での声高な非難とメディアの騒音が高まっている。しかし、米国とサウジの関係を格下げすれば、米国と同盟諸国の安全保障にとって大きな過ちとなるだろう。サウジは、中東の安定をもたらす強力な存在だ。イラクの脆弱(ぜいじゃく)な民主主義を守ることに寄与し、イラク政府をイランではなく欧米の利益に結び付けておくことにも貢献している。サウジ政府は、シリア内戦から逃れてきた大量の難民への対応に関しても、受け入れ国の活動を支え、エジプトと緊密に協力し、イスラエルとの関係強化を通じて支援している。また、米国が主導する「イスラム国(IS)」などのテロ組織との戦いに多額の貢献も果たしている。サウジの石油生産と経済的安定は、地域の繁栄と世界のエネルギー安全保障の要となっている。