有事には「トップダウン」
平時には「ボトムアップ」

 穴をそのままにしておくと、地下水とともにまわりの土が穴に流れ込み、さらに穴が拡大する可能性があります。陥没の影響で建物の基礎周辺の地盤がえぐられて、地下の鉄骨がむき出しになっているビルもある状況でした。さらなる被害を防ぐことを最優先にするなら、まずは埋め戻して復旧させることがもっとも適切と判断したのです。火災現場で、よもや火を消す前に「原因究明をしよう」とはならないですよね。

 不幸中の幸いだったのは、地下鉄工事をしていた事業者の判断で、陥没の予兆を直前に発見し、すみやかに道路を通行止めにしたことで死傷者がゼロだったことです。このため現場検証の必要がありませんでした。これは、早期復旧に大きく寄与しました。

 また、埋め戻しに使った流動化処理土は、セメント混合土ではあっても、通常のセメントのようにガチガチに固まってしまうのではなく、「後日、ボーリング調査で地下の構造を把握することができる程度の硬さ」という都合のいい特性を持っていたことも、埋め戻しの判断の後押しになりました。

 有事と平時ではリーダーシップのあり方も違います。

 有事の際に必要なスピード感のある判断には大きな責任がともないます。ですから、一定のご批判も飲み込む覚悟のうえで、責任をとれる政治家が迅速に決断することが不可欠なのです。有事には「トップダウン」のリーダーシップ、そして平時には、関係各所の意見をしっかりうかがって進める「ボトムアップ」といった使い分けが大切なのです。

次回は、年上の部下1万人のマネジメントについてお伝えします。12/21公開予定です)