有事と平時では異なるリーダーシップ

福岡市長・高島宗一郎氏
高島宗一郎(たかしま・そういちろう)1974年大分県生まれ。 大学卒業後はアナウンサーとして朝の情報番組などを担当。2010年に退社後、36歳で福岡市長選挙に出馬し当選。2014年と2018年いずれも、史上最多得票を更新し再選(2018年11月現在)。熊本地震の際には積極的な支援活動とSNSによる情報発信などが多方面から評価され、博多駅前道路陥没事故では1週間での復旧が国内外から注目された。『福岡市を経営する』が初の著書となる。

 私は、関係各社のみなさんに現地での調整会議に集まっていただき、こうお願いしました。

「事故前に時間を戻したいと自分も思うが、それはできない。できることはいかに早く復旧するかだ。だから、ぜひみなさんの力を貸していただきたい。可能な限り迂回の経路を使う、作るなどしてまずは『仮復旧』をし、その後に『本復旧』するという二段階で作業をお願いしたい。世界がこの陥没のニュースを見ている。今こそ日本の底力を世界に見せましょう」

 ひとり、またひとりと、「うちは迂回路を作るので2日あればなんとかなる」「持ち帰ってやり方を検討する」などの前向きな言葉をいただけるようになり、結果的に陥没からちょうど1週間が経つ直前に、道路の通行再開となったのです。

 通常、信号機の手配も2週間はかかるのですが、福岡県警が他都市から融通していただき、すべてが1週間で復旧できたのです。

 また普段はライバル同士の企業グループにもお互いに協力していただきました。セメントを積んで各工事現場に向かうはずだったミキサー車は「流動化処理土」に詰め替えて24時間態勢で陥没現場に大集合してくれました。このおかげで、3日で埋め戻しを終えることができました。

 ちなみに流動化処理土とは、水の中でも固まるセメントが混じった特殊な土砂のことです。陥没した穴には地下水がたまっていましたが、水を抜くとまわりの地盤が崩れるおそれがあったため、そのまま埋め戻す必要がありました。普段はライバル企業として競争していても、「いざ有事になれば力を合わせて協力するぞ」という福岡市民の心意気が、あの早期復旧を可能にしたのです。

 実は、この一連の復旧作業に入る直前にも、大きな決断を迫られました。それは「原因究明の調査優先」か「埋め戻し優先」かという選択です。

 テレビではコメンテーターの大学教授などが「埋めてしまえば原因がわからなくなる。まずはしっかりと状況を調査しないといけない」と持論を述べていました。たしかに正論ですから、そのような意見に世論も傾きます。

 しかし私は、即座に埋め戻しを選択しました。ネットでは「原因を隠すために埋めているのだ」との批判もありました。しかし私が埋め戻しを選択したのは、もちろんそういった理由ではありません。二次被害を防ぐことを最優先にしたからです。